京都グルメ/京都の和食

祇園 なん波(京都)

祇園にまた一つ誕生した和の名店「祇園 なん波」。旬を活かしきった雅色溢れる優美な料理の数々は、味にうるさい食通客はもちろん、女性には特に訪問していただきたい一軒です。

執筆者:麻生 玲央

和のトライアングル

なん波 なん波
風情ある路地に佇んでいる 暖簾はためく入口
祇園東の中でも一番京都らしい路地とも言える花見小路東入の路地ではこれまで「千ひろ」「祇園 花霞」という2軒の名割烹が存在していましたが、昨年11月からは今回ご紹介する「祇園 なん波」が加わり、「千ひろ」、「祇園 花霞」、「祇園 なん波」の3店による熱い和のトライアングルを形成していることを知る人はまだ少ないかもしれません。

旬の食材を活かした料理世界

難波さん。
料理長の難波 修さん
「祇園 なん波」の料理長は難波修さん。京都ホテルオークラなどで勤められてきた方で、旬を活かした優美な料理が特徴的です。

難波さん曰く、「煮物と八寸と器でできるだけ季節感を出すことに腐心してます」とのことで、今回に御紹介する御料理も「秋」という季節を料理と器で色鮮やかに表現されてます。というにのも、難波さんはお茶を15年以上やっておられていただけあり、器にも造詣が深く、渋い骨董を中心に、現代作家ものも使い分けたりと、料理とのマリアージュを考慮された素晴らしいセンスの持ち主なのです。詳しくは料理解説の時に記述していきますが、とにかく圧倒的な美味しさと美しさで、味覚だけではなく、視覚的にも愉しませてくれる料理の数々は、「招福楼」系ならではの宝技。

味も見た目も美しい料理達

今回は驚異のコストパフォーマンスを誇る昼の5,000円コースから料理を御紹介。内容は全部で8皿。松茸、名残鱧などの高級食材と、手の込んだ豪華な八寸に2種類の水菓子等の内容で5,000円ですから、祇園とは思えない超お値打ちぶり。ご主人曰く「昼は原価を考えずに作ってます」とのことですが、本当に申し訳なるぐらい極上の内容となっています。秋の季節の今、これは必食でしょう。

・先付け
ワタリガニと柿膾(かきなます)の白酢和え
ワタリガニと柿膾(かきなます)の白酢和え
一品目は黄色と紫の菊花が視覚的に鮮烈な印象を受ける「ワタリガニと柿膾(かきなます)の白酢和え」が登場。これはワタリガニ・柿・胡瓜・ミョウガ・利休麩を、白酢和えにしたもので、ワタリガニの濃厚な味わいに柿膾の甘酢味を纏わせた一皿。旬の食材を見事に引き立たせ合わせた雅味が、優しく季節感を醸し出しています。

一品目から、これだけ手の込んだ丁寧で美しい料理が供されたこともあり、以後の料理に期待は膨らむばかり。難波さんが魅せる感激もののコースの始まりです。

・椀物
鱚の葛タタキと汲み上げ湯葉の葛豆腐による椀物
鱚の葛タタキと汲み上げ湯葉の葛豆腐による椀物
骨董の撫子模様のお椀で供されたのは、鱚の葛タタキと汲み上げ湯葉の葛豆腐による椀物。鱚の葛タタキは身のぷっくり感が美しく、儚いほどに旨い。汲み上げ湯葉の葛豆腐も、とろんとした滑らかさが忘れがたい食感で、時間をかけて丁寧に作り込まれた椀ダネだということが強く伝わってくる味わい。

椀に鼻を近づけると柚子の香りが香り立ち、一口、口に入れると、そこから清流のような静かなトーンの出汁を基調に、鱚の旨味エキスが醸し出す薫香が漂い始める。味わいも奥深く、端整の取れたバランス感と、完成度の高い味わいを魅せつけ、最後の一滴を飲み干すまで、会話が止まったほど。ワインと同じように、椀物の出汁というのは、優れた一流の料理人の手にかかると、格段にグレードが上がり、まさに芸術の域となることを改めて実感しましたね。

・向附
名残鱧の焼き霜と鯛、それに剣先烏賊の3種盛り
名残鱧の焼き霜と鯛、剣先烏賊の3種盛り
向附は秋らしい割山椒の器で供されました。内容は名残鱧の焼き霜と鯛、それに剣先烏賊の3種盛り。名残鱧の焼き霜は、焼き加減というか、焼き目の付け具合がポイント。白い鱧の肌に、こんがりと黒いコントラストが入り、これがとにかく食欲を誘うのです。もちろん、さすがは難波さん。写真の通り、最高の焼き技術で見事な焼き目付け。

・八寸
秋の八寸
秋の彩り溢れる八寸
秋の八寸ということで、松葉と松ぼっくりの模様の塗りのお皿には、秋色に色付いた柿の葉っぱ、赤と緑のもみじの葉、葛の葉を彩りに、たっぷりと飾りたてての登場です。こういった目を奪われるような秋色は視覚的にも旬を感じさせてくれますね。こうして地の葉を使い、芸術的に魅せる演出は和食ならでは。イタリアンやフレンチでは、こうはいきません。

さて、八寸の内容ですが、「とんぶりと鶉の温泉卵の菊花和え」、「筋子スダチ釜」、「鯛の手鞠鮨」、「子持ち鮎の煮物」、「松茸とほうれん草のおしたし」、「紫頭巾」、「栗の甘煮」の合計7種類盛りとなっています。

自家製で醤油漬けした筋子はスダチを釜に見立てているため、ほんのりとスダチ香を纏うワンポイント。また、同じように「松茸とほうれん草のおしたし」も、レモンを入れものにすることで酸味を効かせてあったりと、どれも緻密で妥協のない調理スタイルで、旬を活かしきった完璧な料理世界を作り上げています。

次ページでは、コース後半の料理達を御紹介します
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