そば/そば関連情報

そば切り八寸の、謎。

たった240mmの長さのそばを、粋に手繰ることができるのであろうかという、他愛もない哲学的命題について。

執筆者:井上 明


八寸のそばって、手繰れるのだろうか?



そばの長さに関する口伝で、「そば切り八寸」というのがある。八寸、つまり国際単位系で言い換えると約240mmである。インターネットや関連の書籍をひもとくと、そば切りは八寸が食べやすいという記述が圧倒的である。そこで、そばを八寸の長さに切って、それをつまんでみたのがこの画像である。



どうでしょう?違和感を感じないだろうか。これを数本つまんだとして、つるつるっと、手繰れるものだろうか?あまりにも情けない長さのように思えるのは、私だけだろうか。
さて、下のは、その倍の尺六寸のそばをつまんだところ。東京のおそばやさんで蕎麦を手繰るとき、この長さのほうが感覚的にしっくりとくる。



それは、無理もない話で、業務用のそば容器(生舟=なまぶね)の奥行は9寸(270mm)あたりが標準的な寸法である。そこに納まるそばは、どのそば打ち教本を読んでも、手前の畳み目は切れずに繋がるものとされている。ということは、250mmの行ってこいだから、500mm位の長さになるのが普通だ。つまり、下の画像のそばは八寸の倍の尺六寸=480mm。どう考えても、この長さのほうが、見慣れたいつものそばなのだ。

そういえば、うどん一尺なんて、短かすぎるよね



この口伝がそばの絶対的な長さのことを指すという説に、どうしても違和感を禁じ得ない理由はもうひとつある。それは、うどん一尺という口伝とセットで語られていることである。
えーーっ、ちょっと待って欲しい。どうやったらそんなに短いうどんが打てるんでしょう?うどんは、そばと違ってつづれ折り(うどん業界の方は屏風たたみと仰います)に畳んで、ばしばしと切っていくもの。1.5kg位のうどん粉は、75cm四方位の生地となってのしあがるから、どんなたたみ方をしようが、うどんは途中で切れはしない。なので、一尺=300mmなどという中途半端な長さに仕上げるのは、逆にとても至難の技といえる。

だから、そば切り八寸、うどん一尺という口伝は、実は麺の絶対的な長さのことではなく、切ったあとに納める容器の大きさの目安を示しているよう思えてならないのだ。ちがうかなぁ。



こちらは、スペシャルフィーチャー。うどんガイドの蓮見さんが、築地そばアカデミーの開業総合科の講師として打ったうどん。1.5kg打ちで、堂々70cm位の長さがある。

蓮見ガイド談『えーっ、30cmみたいな短いうどんを打つなんて、普通ではできないですよ、乾麺のサイズとしてなら、わからなくもないですけどね』とのことだ。

ちょっと小ネタだが、そば屋で交わす他愛もない話としてお耳に入れておきたく、記事にしてみた。
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