ワイン/ワインバー・レストラン

シンプルに味わう:ブラッスリー・オザミ(3ページ目)

東京駅から、そして有楽町駅から。ちょいと歩けばパリの食堂が待っている――ここブラッスリー・オザミなら、気取らず待たされずに、フランス食材の滋味がたっぷりと味わえる。

執筆者:橋本 伸彦

野生の生命力を血肉に


この店では、秋口から冬にかけてジビエ(野生動物の肉)が名物となる。2009年10月中旬のメニューを見ると国内10種・海外5種のジビエがコースに組み込まれており、例年11月にはシェフの羽立昌史(はだち・まさし)氏が自らライフルを手に仕留めた獲物がお目見えするという力の入れようだ。取材時はスコットランド産のライチョウが入荷していたので、フォン・ド・ヴォー(仔牛の出汁)に栗の花の蜜とオレンジを加えたソースとイチジクを添えたローストに仕上げてもらった。

『スコットランド産ライチョウのロースト』

どうだろう?この料理ときたら――ジビエ好きがヨダレを垂らしそうな、艶かしい姿ではないか! どこかの高級店で、ペラペラの薄切りで鎮座しているようなライチョウではない。半身を使って、かなり厚目にスライスした胸肉はじゅうぶんな歯応えがあり、噛むほどに赤い血潮と生命力、そして旨味が染み出してくる。写真にライチョウの足先が見えるが、胸肉の下に置かれた腿肉はしっかりと火が通って、ライチョウの匂いが濃厚である。手づかみで齧りつけば、むせかえるような野性的な歓びが味わえる。

シャトー・ドメーヌ・ド・レグリーズ 1997年
ボルドー地方のポムロール地区から、シャトー・ドメーヌ・ド・レグリーズの1997年ヴィンテージが注がれる。作柄はいまひとつな年だが瓶詰めして10年ほど経ち、熟成感がしっかり出ている。ボルドーの有名シャトーの、古いヴィンテージでありながら値段が手頃とあって、この店、この料理にどんぴしゃりのチョイスである。何でもかんでも「いいヴィンテージ」をというマニアックな飲み方ではなく、ヴィンテージを上手に使い分ける、ワインを飲みこなしたフランス人のような発想だ。

野生の滋味がたっぷりのライチョウに、イチジクが甘くやわらかく寄り添う。そこに熟成したポムロールの風味、土の香りやドライフルーツのような熟した甘やかな風味が融け合って、しばし至福の時間が訪れる。いつの間にか満席となったテーブルの間を数人のスタッフがきびきびと立ち働き、客のかもし出すにぎやかなざわめきが、店内を心地良く充たしている。

さあ、デザートを食べなくては!

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます