中国茶/おすすめの青茶・烏龍茶

雪片鳳凰単[木叢]蜜蘭香

最近人気の鳳凰単[木叢]、そのなかでも非常に飲みやすいのが蜜蘭香です。冬にしか摘まないという「雪片蜜蘭香」って、どんなお茶なのでしょう。

執筆者:平田 公一

最近とても人気のあるお茶に鳳凰単[木叢](ほうおうたんそう:Feng Huang Dan Cong)があります。広東省東北部の潮州にほど近い鳳凰山の名産で、非常に歴史のあるお茶だといわれています。この単[木叢]には、様々な名称がついているのですが、今回はそのなかでも私個人的に一番好みの蜜蘭香を取り上げてみました。しかも、この単[木叢]ちょっと違う!まずは、読んでみてください。この時期にぴったりのお茶だと言えるでしょう。

(注)日本の漢字にCong(コン)の字がないので、ここでは、[木叢]と標記します。


■ 広東省潮州市鳳凰鎮
潮州からバスで約1時間ほどで鳳凰鎮(ほうおうちん)というのどかな村に到着します。ここは鳳凰単木[木叢]という広東省の青茶の故郷です。昨年、中国の科学院の科学者グループが全国唯一の無公害烏龍茶モデル産地として認定した地区としたことでも知られています。

もともと山地民族でお茶との関係の深い瑶(ヤオ)族の棲む村として知られていますが、湖南省西部の武陵山(ぶりょうさん)に故郷を持ち、宋代頃から郷里を後にして移動を初め、広東省にも移住してこの地区のお茶作りに貢献していると言われています。実はこの瑶族の移動経路に青茶が残っていることから、瑶族が青茶の生みの親という説もあり、武夷山よりも前に鳳凰山にいた形跡があるために鳳凰山に残るお茶が烏龍茶の発祥ではないかという話もありますが、これはまた別の機会に。


■ 鳳凰単[木叢]とは
さて、鳳凰単[木叢]の単[木叢]とは、もともと鳳凰水仙(広東水仙)種を一株ごとに植えて摘み取りされるお茶のことを意味します。つまり鳳凰山のお茶がこのようにして栽培されていたことから、そのままお茶の名前になったということです。

この鳳凰単[木叢]は、もともと鳳凰山のすぐ隣にある[山東]烏(ウードン)山という山の頂上付近に生えていた樹齢700年以上もの茶樹を原木として、栽培されるようになったものだと言われています。宋時代からあるといわれることから宋種単[木叢]と呼ばれるこの原木は、残念ながら1928年に枯れてしまいましたが、500年以上の樹齢の原木が数種類残されており、それぞれ「蜜蘭香」、「東方香」、「黄枝香」、「芝蘭香」などと呼ばれています。とある茶園には、「宋茶」という字が刻まれた石が置かれていますが、ここのお茶は毛沢東に献上されたことから「東方紅」と呼ばれています。現在ではこれらを挿し木で増やしてあちこちで栽培されているので、「八仙」、「玉蘭香」、「桂花香」、「蜜香」など、80を超える様々な名前がつけられています。


■ 蜜蘭香単[木叢]
その中でも「蜜蘭香(みつらんこう:Mi Lan Xiang)」は、ライチの香りとでもいうような、とてもしとやかでかつかぐわしい香りのするお茶として知られています。鳳凰単[木叢]の品種は水仙種ですが、この品種は非常にタンニン分が多く、ともすると苦味が出やすいお茶なのですが、この蜜蘭香は、比較的苦味の出にくい、香りと味のバランスのとても良く取れたお茶で、日本にもファンの多いお茶なのです。透明感あふれるお茶で、ほんのりとサロメチールのような爽快感を持っているお茶でもあります。


■ 雪片
ところで、このお茶は一般的には春と冬に摘まれ、冬茶は「冬片」と呼ばれますが、実はもう一つ「雪片(せっぺん:Xue Pian) 」と呼ばれるお茶があります。これは、なんと一年にたった1回しか摘まないスペシャルティーなのだとか。しかも春に摘むのではなく、冬至から小雪の間にだけ、大きく育った茶葉を積んで丁寧に製茶したもの。雪と霜に耐えた茶葉は、30種以上のアミノ酸が含まれているため、上品な中に力強い香りと味をもち、味と香りが微妙に変化していきます。春茶のような華やかな香りはしませんが、その代わり、口の中で非常にボディーのある味わいが広がり、そして蜜蘭香独特のやさしい香りが鼻の奥と口中に漂います。それはそれは絶品のお茶です。残念ながら生産量がとても少ないので日本ではなかなかお目にかかれませんが、もし出会うことができたら一度は試していただきたいお茶です。個人的には、今回ご紹介した雪片蜜蘭香がこの冬一番の絶品でした。


■ 淹れ方のポイント
あまり難しく考える必要はありません。蓋碗でも良いのですが、水仙種独特に苦味や収斂味をまるくするのは茶壺です。口の広い茶葉を壊さなくて良い茶壷を使いましょう。

湯の温度:
95度~100度。香りの良いお茶ですから、しっかりと沸騰させた湯を使いましょう。
茶葉の量:
150cc~180ccの大きさの茶壺で焼く6g程度。渋みが苦手という人はやや少なめに。

蒸らし時間:
1煎目の目安は大体1分程度。2煎目はやや時間を長く1分30秒ぐらいで淹れてみましょう。湯の温度を徐々に下げたりして変化を楽しむのも面白いと思います。
お茶請け:
ボディーのしっかりしたお茶ですから、基本的にはなんにでも合うでしょう。無理にお茶請けがなくてもOKですが、上品なチョコレートケーキなどだと、このお茶とのマッチングはとてもよいと思います。




  バンブー茶館
  おいしい単[木叢]が飲める四国の茶館です。
 http://www.chakan.org/

  ANOMA
  バンブー茶館の単[木叢]が飲めるお店です。
 http://www10.plala.or.jp/anoma/


 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます