うどん/讃岐うどん

散歩道のうどん屋  根の津 文京区

文京区根津界隈の町並みをぶらりと歩いてみると妙に懐かしい空気を吸っている自分に気づくだろう。そんな街角の一軒。絶品の讃岐饂飩店がある。

執筆者:蓮見 壽


讃岐饂飩 根の津



上野から谷中、根津界隈は東京でも何となく時間の流れが遅れているような不思議なエリアだ。不忍の池周辺から千駄木に向かう周辺はなかなかおもしろいスポットが連なっている。明治の文豪が愛した町は晴れの日の散歩もよいが雨の日の情緒も捨てがたい。
この町並みは表通りから一歩中に入るとより楽しめる。都会の喧騒からある意味取り残されたような風景が目に飛び込んでくる。
思わずニヤリとしてにわか探偵団の気分になれる。今日はどんな発見があるだろう。



木造の3階建ての串揚げ屋『はん亭』はこの界隈の名物。粋な黒の外壁がこの界隈の雰囲気を象徴している。
この街の雰囲気で気づくことがある。商店のほとんどが個人商店または小規模な会社で昔ながらの商売というか「商い」という言葉がピタリと合いそうな点である。その意味では若者が闊歩する盛り場と違い落ち着いた大人の街の雰囲気がある。またその雰囲気を崩さないような気遣いが感じられる。

根津のシンボル根津神社

根津というとやはり根津神社、根津権現が街の象徴だろう。少し華やいだ徳川家ゆかりの神社は街の人々の心の大きな拠り所。また同じ境内にお稲荷社が2つ。参道の稲荷道は何となく俗世との結界の様な雰囲気を漂わせる。



4月末からは3000本のツツジが満開になる。参拝客の目を楽しませてくれる。
文京つづじ祭りは大勢の人でにぎわう。この時期はいつも静かなこの界隈も華やいだ喧騒の中に入る。初夏を迎える下町のエネルギーを感じさせる。

讃岐饂飩 根の津
この街に2003年4月一つのうどん屋ができた。根津神社の近くである。町並みに溶け込むように穏やかな浅黄色の暖簾が印象的だ。店の名前は『讃岐饂飩 根の津』根津にふさわしい落ち着いたたたずまいをみせてくれる。開店からわずか一年だが着実に実力をつけて東京のさぬきうどん通を唸らすほどの店になっている。
店主の亀山さんは塾講師からこのうどんの世界に転進。子供の頃からうどん好きの彼が驚いたのは雑誌で紹介された銀座のさか田のうどん。今までに経験したことの無いうどんの質に驚く。今まで食べていた讃岐うどんとあまりの違いにショックを受けたと言う。それを機会に本場香川のうどんを食べ歩きどっぷりとうどんの世界にはまる。きっかけとなったさか田に無理やりのような形で修業に入り2年半、2003年に開業にこぎつけた。


うどんづくり
『さか田』ゆずりの美しいうどんだ。艶のある透明感と滑らかな食感。洗練されたうどんが魅力的だ。銀座の超人気店のうどん作りのノウハウと根の津のうどん作りではやはり一日に仕込む量の違いがある。逆に言えば手間をいとわない時間をかけた熟成が可能だ。より滑らかな喉越しとコシを求めて50パーセント以上の加水に落ち着く。一般的に手打ちの場合48パーセント位の加水が多い。それよりも多くなると生地が柔らかくなりすぎるきらいがある。その柔らかくなりすぎるのを踏んで踏んで鍛えなおすのが多加水の麺である。


人気メニュー
冷たいうどんの美味しさと温かいうどんのダシの美味しさをアピールするために温冷二種うどん800円が用意されている。気持ち小ぶりの丼2つのセットである。文字通り冷たいうどんの魅力と温かいうどんのダシを含めた美味しさが一度に味わえる嬉しいメニュー。レギュラーサイズの7割程度の大きさというがなかなかボリュームがある。私と違い普通のお客さんはうどんは一杯しか食べないのだ(笑)。レギュラーサイズを2杯食べ比べるのはいわゆるマニア?食事としての1杯はなかなかのボリュームだ。1玉300グラムぐらいはありそうだ。ちなみに大盛りは2玉。


この2杯を食べてリピーターになるといよいよ好みのうどんの注文となる。冷たいうどんはぶっかけうどん600円生醤油うどん650円が人気だ。外気温が20度を境に冷たいうどんが人気になると言う。その気持ちは良くわかる。砥部(とべ)焼きの丼にエッジの利いた麺。ビジュアル的にも美しく食欲をそそられる。しっかりした質感のこの丼とうどんの取り合わせ絶妙である。


もりうどんはつけダシが2種つく。いわゆる醤油ベースの汁と胡麻だれである。この胡麻だれも芳ばしく滑らかでクリーミーで印象的だ。


ダシづくり
もうひとつうどんに欠かせないものはやはりダシ。汁のことだ。修業先の『さか田』ではダシにイリコを使わない。東京風の鰹節と昆布をベースにした洗練されたダシだ。根の津はイリコにこだわった。やはりさぬきうどんにはイリコダシだ。亀山さんのこだわりのひとつだ。


もちろん今のダシにたどり着くまでは大変な苦労があったという。しっかりと取られたバランスの良いダシはうどんをより引き立てている。とくにかけうどんの美味さは『さか田』を超えていると思う。これはやはりイリコのなせる技だろうか。といってもイリコの強さはそれほど強いものではない。上品に都会的に仕上げている。旨みの深さをより深くする洗練されたかけダシに仕上がっている。

散歩スポットの根津周辺、週末散歩はいかがかな。季節も良いし冷たいうどんが待っている。他にも美味しいもの屋さんが見つかるかも。

讃岐饂飩 根の津DATA
東京都文京区根津1-23-16
電話:03-3822-9015
営業時間11時30分から14時30分 土日祝は~15時
17時30分から20時20分ラストオーダー
日曜日は昼のみ営業
定休日月曜日 祝日の場合は翌日
アクセス
最寄り駅千代田線根津駅徒歩5分
不忍通り根津神社入り口交差点を左折右側根津神社手前
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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