年齢と経験から、教え育てるやり方を
「かつてこの世界は年齢と経験がモノを言う職人世界だった。しかし、昔のやり方では若いスタッフはいつかないし、仕事を覚えるのも遅くなってしまう。昔はリーダーが仕事を教えることは少なく、先輩達の背中を見て仕事を覚えろといったやり方が普通。それではダメで、今はちゃんと繰り返し教えないと。そうすると、1年でひと通り仕事を覚え、一人前になることができる。」と話す。
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| 漁業の将来を真剣に語る酒井氏 |
そのリーダーは以前はまったく別の分野の仕事から転職し、今日に至るという。ここぞという時の仕切りと存在感は確かにひときわ目立っていたが、ある意味非常に危険な仕事と向き合っているわけだ。そんな中で厳しさが漂う独特の雰囲気を醸し出していたことは印象に残る。
船の上での仕事は役割分担がなされ、整然と仕事をこなていく。すべての仕事を覚えるために定期的なローテーションも欠かせないと酒井氏は話す。
酒井氏は18年前に独立し、たまたま空きのあったこの漁場を幸運にも得ることができたという。漁場は決められていて、勝手に網を張ったり漁をしたりすることはできない。そしてその漁場の権利もよほどのこと、つまり会社の倒産とか不慮のことが起きない限りは滅多にないのだ。そしてその漁場も場所により、いい魚がたくさん獲れ易いところとそうでないところとある。
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| 料理人たちも熱心に酒井氏の話に耳を傾ける |
酒井氏はよくない漁場と言われているところでも網の配置や知恵を絞った手法によって実績を挙げることができるという。配牌が良くなくても状況を見ながら最善の手を考え、上がりに持ち込むといったところだろうか。駅前の好立地ではないが、路地裏の個性的な人気のあるレストランといったところかも知れない。
保管環境にも力を入れており、相当の投資をして海水シャーベット装置を設置し、その氷を使用することにより魚の鮮度を良好に保つことができるという。さらに強調していたのは漁業を取り巻く環境のことだ。
「これからはたくさん獲れればいいという時代は終わりました。小魚が上がっても捨ててしまうのが普通だけれども、これを少しでも海に返すことによって何年か後にはここに戻って来る。そんな優しさが必要ではないかと思うのですよ。」
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| 重さ10キロの魚を手にするシェフ |
話は具体的だ。各漁船で定置網にかかった小魚をひとすくいでも海に返すことができれば、能登エリア全体で見たらかなりの資源の節約になるという。しかし、環境への配慮に対する認識の浸透と手間のかかる作業にはなかなか理解を得られないという。
フランス料理のみならず食の世界には必ず消費者のところに見えないこうした現場がある。野菜であれば土があり、魚であれば海がある。私もそうなのだが、目の前の皿に載る料理の向こう側はなかなか見えないことが多い。産地や職人の姿にも気づくことができると、食事の時間はもっと楽しくなる気もするのだがいかがだろうか。
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| 港に着いた魚は素早く仕分けられ市場に運ばれる |
今回の定置網漁は幸運にも天気には恵まれたが、港での水揚げ後の賄い漁師鍋にはその後のスケジュールのこともあり泣く泣く断念。それだけが心残りか。
ちなみに今回の漁で獲れたオスのタラを一匹購入し、飛行機に積んで早速某レストランのシェフの元へ。タラとヤリイカのカルパッチョ、そしてタラの白子のムニエルをいただいたが、それは能登の夜明けと漁の現場が沸き立つ至福の味わいがあった。
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| 言いようのない自然の恵みと言うべきか |
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