
フレンチというキーワードでいろいろな情報を検索していくと、当然いろいろなレストランに突き当たる。それがちょっとセンスのいいホームページだったり、一生懸命工夫して温かみのあるホームページを持っているところであったり、フレンチとの出会いはいろいろだ。
フレンチは何も料理評論家がメディアで取り上げるところばかりではない。街の中の日常にしっかり根を張ろうとしているところもちゃんと存在している。これまでもそういった目立たぬ小さなレストランを取り上げてきたが、これからもしっかり探していくつもり。
先日たまたま井荻(杉並区)にある
レストランヒライを発見した。シェフの料理や接客への思いがきちんと書かれており、ご自分の言葉で書かれたものに何かピンとくるものがあったような気がしたのだ。たまたまその日は人生の荒波をくぐり抜けた友人と、とりあえずフレンチしようということになっていたので、予約を入れてみた。
井荻は環八沿いにあった駅ということは覚えているのだが、辺りは道路の高架化によってモダンな地下通路ができていて静かな雰囲気。すぐにレストランについたが、本日満席の札が下がっていた。
「へぇ~流行っているじゃないか。」ご夫婦2人で営むこの小さなスペースは寛ぎと自然な暖かさに満ちていた。店内にはワイングラスを入れる棚があるだけのシンプルな内装。ベンチシートの席も椅子も別にどうってことはない。
隣には
年配の男性達がビールとメンディッシュ、チーズを食べながらゆっくりと談笑中。カウンター席や私達の隣には可愛らしい
若いカップル。向こうの4人テーブル席には3名の叔母様達。
そんな風景の中、マダムがてきぱきとサービスにあたる。でしゃばらず、とても丁寧に丁寧に。
ゆっくりと堅実に。優しい方なんだろうなあ、と話し振りをみればすぐわかる。
メニューは
3800円のシェフのお薦めをを選択。もっと安いメニューもある。ワインリストは高くて6000円程度。3000円~4000円程度のものが多いが充実度合いは今ひとつか。でもこの街場のレストランでワインリストに薀蓄を傾けても何の意味もないことはわかっているのでもうやめよう。ただ棚の中にリーデルのグラスがあったので、近隣の方でグランヴァンを持ち込む方はいるのかも知れない。でも仕入値1500円位で4000円程度の値段でオンリストする工夫はこれからの課題か。

前菜には鳥の白レバーのテリーヌにゴルゴンゾーラソースがかかったもの。ほのかなレバーの苦味をでしゃばらない程度のゴルゴンゾーラでさらりと包むあたりは見事な一皿。
カウンター奥のキッチンで一人黙々と食材と格闘しているシェフはシャイな方のようだ。メインディッシュのビーフステーキのオニオンソースはシェフが自ら説明とサービスにあたる。肉料理はビーフステーキしかないが、食してみると質のいいヒレ肉には文句のつけようはない。地元密着のレストランはあれもこれも用意するより、これが得意だ!というものに絞るというのもごく当然のことか。
とはいえ、もうひとつ何か欲しい。。。例えば食感のはっきりした地鶏や脂の乗った羊とか。でもこういったことをシェフはきっと考えているに違いない。
ワインのペースが落ちるとマダムがすっと水を持ってきてくれる。デザートもほっとするもの。3800円のコース以上にとても満足したのはシェフやマダムのホスピタリティの賜物か。
そのお二人、月に1度は連休を取って海釣りに行くらしい。その写真はホームページに掲載されているが、釣りのあとのメニューにはその時釣れた魚をお出しできますよ、と語る
シェフとマダムの表情もまた素敵。気持ちのこもった料理ともてなしで、紅茶をすすりながら、ここまで食事に来て良かったなあと、そして帰りは荻窪行きのバスの中で、料理を思い出しながら私達はずっと語り合っていた。

隣の若いカップルも楽しそうに料理のおいしさを表現していた。そんな彼らを横目で見ながら、フレンチの裾野は街場のレストランが流行らないとその広がりには限界がある、うん、確かにそうかも知れないと自分で納得。
僕達の今夜の食事はとても楽しいものだった。決して派手さはないがフレンチの楽しさを、気持ちのいいホスピタリティと共に伝え続けているレストランがあることを、広く知らせたいと思った。
■レストランヒライ
東京都杉並区井草3-3-2
03-3301-2351
定休日:毎週火曜日・第一水曜日(祝祭日の場合翌日振替)
L:11:30-13:30(Lo) D:17:30-21:00(Lo)