
メニューは前菜、魚、肉、デザートから選ぶことができる。値段はコース仕立てにして概ね4,500円程度か。ワインリストは3000円~5000円の範囲内で良質のものが揃っている。
ハーフボトルが多いのも有難い。この日はグラスワインの後、白はルイ・ジャドのムルソー、赤はシャサーニュ・モンラシエのいずれもハーフボトルをオーダーすることとした。

アミューズはさくっとした食感が夏を感じる緑のトマト。そして前菜のひとつ、
「茄子と夏野菜のマリネ」 はお奨めの一皿だ。以前ご紹介した
ミラヴィル同様、富士山麓は松木農園から直送される有機野菜だが、何故か見た目も綺麗で、味は奥行きあるしっかりとした味わいが感じられる。
茄子は一旦、油でさらりと揚げてそのあと丁寧にマリネしたもの。色合い良く並べられた小さな夏野菜の数々が茄子という小さな船(プティバトー)の上で、小さなダンスを踊っているように見えて、視覚的にもとても楽しくなる。
見せ方以外に、特に手を加えない調理的余裕がほのかに伝わる、まさにスペシャリテと呼ぶに値する料理。

相方の
スモークされたサーモンは脂の乗った大型サイズ。ビネガーの利きもほどよく上品な味わい。濃い目のシャルドネとの相性は完璧すぎるほどだ。ワインとソースが幾重にも重なりサーモンの味わいも変化していく。フランスではこのくらいの量が一般的だが、日本ではちょっと多すぎるかも。特に女性には。
そのあとの
桜鯛の香草パン粉焼きはオーソドックスな料理だが、鯛が肉厚でシマリが良く、ラタトゥイユ仕立てのソースも爽やか。焼き加減も申し分なし。今年の夏は終わった?が皿の上はまさに夏本番だ。

魚を挟んでメインディッシュは
「雛鳥のロースト、フォアグラ添え」。これもなかなかのボリュームで嬉しい限り。柔らかさのなかにある優しい味わいが雛鳥の特徴だが、小さくまとめずに、どっかんと盛り付けてくるあたりの攻撃的?な姿勢が今夜の食のクライマックスを彩る。
料理はボリュームもしっかりあり、小さいけれど上品なライブ感と開放感があり、サービスの応対もとても親切、丁寧。トイレにはハンドタオルが置いてあり、一人客も多いのか料理雑誌もさり気なく置かれていたり、ディテイルも優しさに溢れている。
もちろんよく気がつくサービスも同様。会計時にはレシートに日本語でメニューをしっかり書いてくれる。それもとても丁寧な字で。そう、すべてが丁寧で優しい。
さて、隣は誕生日を祝う女性客。お祝いのデザートがサービスされるとちょっとだけ照明が暗くなり、ほんのりとお祝いの瞬間が訪れる。
客層もご近所の老夫婦のご友人、カップル、女性同士、一人客と様々だが、皆、上品でその場の雰囲気にゆるりと溶け込んでいるようだ。
いいなあ、こういう場の雰囲気。そうだ、フレンチの楽しさって料理やインテリアもそうだが、その時その一瞬の「場の雰囲気」って大事なんだな、と。それは決してお金で買える物ではなく、店と客とそこに集まるすべてが調和して初めて生まれるものかも知れない。
季節柄メニューにないものがあったり、ワインの欠品も。でもそんなことにこだわる必要などないだろう。今夜のように、旨いフレンチをやさしくサービスしてさえくれれば何度でも来たくなるレストラン。もちろん遠方より足を運ぶ価値も十分にある。
最後に、ちょっとだけ。
「嶋様がいらっしゃいました!」とおっきな声で厨房に伝えられたとき、実はちょっとだけ恥ずかしかったです。■プティ・バトー
渋谷区上原1-12-3サンフラッツビル1F
03-3485-9928
ランチ /11:30~14:00 LO
ディナー/18:00~21:30 LO
定休日 /水曜日
予算はワインにもよるが一人8000円~1万円が目安。この日は前菜と魚、肉、デザートとハーフボトルのワインを2本飲んで19,750円(2人分税サ込)