私事で恐縮だが、遥か20年前の学生時代、渋谷のキャバレーでアルバイトをしていたことがある。今は少なくなったがいわゆる大衆キャバレー。五月みどりや奥村チヨといった往年の歌手のステージがあり、それはそれは毎晩賑わっていた。
私は、新宿歌舞伎町より渋谷が持つちょっと軽めの猥雑さが気に入っていた。そのキャバレー跡地は小奇麗なオフィスビルに変っていたのには、時代の流れを感じてしまう。しかし匂いを撒き散らす角の焼鳥屋や中年サラリーマンが焼酎を煽る居酒屋がまだまだ健在なところをみると、その猥雑さはいい形で進化しているのか。
先日、常連客である友人に誘われて食事に出掛けたところが渋谷の
Cheers。周りは小ぶりの飲食店一色だが、ほとんどが和食系。そんなエリアにワイン系なグルメを集める落ち着いた空間が広がっている。

玄関から通じる廊下と左手の個室スペース、右手のカウンターとフロアのテーブル席と小さな店なりの3つのバリエーションを持つ。カウンターで個室スペースは6~8人ほどで貸しきることもできるようだ。
2人でまったりとした赤ワインを楽しむにもうってつけかも知れない。
それにしても、全体から感じるこの居心地のよさは何だろう?椅子の座り心地からくるのか、やや暗めの照明やその角度からくるのか、料理やワインの香りからくるのか。

料理はフランスの地方色をさりげなく取り入れたメニューが特徴だ。ブルゴーニュやラングドック、アルザス地方の伝統料理をアレンジしたものが目に付く。
印象に残る盛り付けではないが、ひとつ丁寧に仕上げられており、厨房内で気持ちを込めて一皿一皿作られていくのが伝わってくる。ワインに勝ったり負けたりすることのない、控えめながら軸がしっかりしている、そんな料理である。
ワインは
250種類も銘柄が揃えられている。じっくり選ぶのも楽しいが、予算とだいたいの好みを伝えといくつか候補をあげてくれるに違いない。この日は選んでいただいたサンテミリオンのワインを1本じっくりといただいた。
300人はいたホステス、黒服支配人の威厳、五月みどりにもらったサイン、族上がりのホール係。。。Cheersのワインとともにそんなキャバレーでアルバイトしていた半年間の記憶が走馬灯のように浮かぶ。20年前に赤いユニフォームを着てフロアを走り回っていた自分と、同じ渋谷の地で、今こうして静かに食事をしている20年後の自分。そんなことを思い出させたのは、この落ち着いた何ともいえない居心地の良さ故なのかも知れない。
軽め猥雑系渋谷の夜、静かに一人で食事を取りたい時や、カップルで1本のワインと食事でまったりと過ごすには、なかなかお勧めのレストランである。
なお隣のビルにあるトルコ料理の名店
ヒラルも見逃せない。
Cheers
渋谷区道玄坂1ー7ー9 Y.PLACE 2F
03-3461-6123