友人に良く聞かれます。「ねえ、安くておいしいお店、ない~?」と。私に限らず多少食べ歩いている人ならこういう経験ありませんか?
皆さんはどういう風に答えているのでしょうか。その質問こそ答えようもないとっても難しい難問なのです。上記のように聞かれた場合、真面目に答えるとこうなります。
「安くてうまい店って基本的にないんだよね。」

まず都心に関して言えば、出店コスト(初期費用)やインフラ部分(光熱費、家賃等)が欧米諸国に比べて非常に高いという構造的な問題があります。仕入れにいくら工夫しても店を運営するコストが嵩み、価格に反映することがなかなかできにくいのが実態です。何十店舗も運営するチェーン店なら一括仕入や間接部門の集約などでコストを押える手立てはありますが、個性的な小規模な単独店舗では大量買付、大量消費はまず不可能といえるでしょう。
またおいしい素材は需要と供給の関係から値段が高くなってしまいます。新鮮でかつ手をかけて育てられた素材は値が張って当然ですし、状態良く輸送するにはこれもコストがかかります。特に野菜などはそうですね。
でも皆さん、最近の野菜って野菜の味がしないと思いませんか?特にトマト。子供のときに食べた、赤くて、かじると甘苦い本来のトマトの味はいったいどこに行ってしまったのでしょう。スーパーで売っているトマトのほとんどが味気のない、水のようなトマトばかりです。桃太郎トマトと書いてあって、多少の期待を込めて買っても、全然おいしくない。
もちろん探せばあります。ただし非常に値段が高い。温室栽培の大量生産品の陰に隠れて、特別仕様でなければ、もうあの味わいを出すことは不可能になってしまっているというのが現実です。非常に悲しい現実です。見た目などどうでもいいんです。見かけは不細工でもおいしい野菜を食べたいのです。
と、ちょっと語気が荒くなってしまいました。
では安い野菜=ちょっと水っぽいおいしくない野菜、を調理によっておいしく化けさせることができるか?何人かのシェフに聞きましたが、技術的には可能だそうです。まず調味料。そうです、化学調味料はそのためにあるのです。別に頭から化学調味料を否定する訳ではありません。安い野菜を調味料と技術によっておいしく「感じる」味に変えることはそれはそれで非常に意義のあることではないかとも思うのです。しかしそれは「本物」ではありません。

ハレのフレンチで付け合せの野菜がとってもおいしかったら、ちょっといい気持になりますよね。メインはおいしくて当たり前と思ってしまうので、付け合せの野菜がおいしいとそれだけで話題になるでしょう。焼き加減が抜群のローストされた羊の付け合せについているポテトが、昔ながらの土の香りがする芋の香りと味わいを感じると、シェフの高い技術のみならず素材に対して決して妥協しない気構えみたいなものを感じて、とっても嬉しい気持になります。
当然ながらそのポテトは大量生産ではなく、しかるべきコストと手間隙かけて作られたものなのです。そうなると当然ながら価格は高くなります。それがおいしい食材の価値というものなのでしょう。
以上の理由からちょっと飛躍的かつ断定的な言い方ですが、「やすくてうまい店はない」と思うのです。。。皆さんはいかがお考えになりますでしょうか。