テニス/テニス関連情報

フェデラーが使用するラケットの進化

フェデラーが今年も圧倒的に強い。フレンチオープンこそタイトルを取れなかったものの、4大大会のうち、3大会に勝利。ここで彼の使うラケットの特集を2回に分けてお届けします。今回はその第1回。

執筆者:吉川 敦文

フェデラーラケットの進化は、最新技術とともに

現在世界No.1、史上最強とも言われるフェデラーが大きく注目され始めたのは2001年。当時、史上最強と呼ばれたサンプラスがウインブルドン5連覇に挑戦した年の4回戦で、19歳のフェデラーがサンプラスを破った時ではないでしょうか。

当時フェデラーが使用していたのは「PRO STAFF 6.0 85」と呼ばれるラケット。それを含め、現在までに5つのモデル(いずれもwilson)を使用してきています。フェデラーラケットの進化過程は、フィーリングのよさを維持し、ラケットフレームを強くして安定感を生み出しながら現代のパワーテニスに対応することにあったといえます。フレームの形やラケットに使われる最新技術にその歴史が如実に現れています。

厚みのないフレームを選び続けたフェデラー

トッププレーヤーにとって、長年培ってきた打球感はとても大切です。ボールの飛び、インパクト時のフィーリング、回転量などは、そのままプレーの質につながるもの。しかし仮に、スピン量が増え、ボールのスピードが速くなったとしても、自分の意思と連動して増やしたものでなければなりません。

フェデラーも例外ではありません。以前、多くのトッププレーヤーたちは厚み18mm以下のフレームを使用するという時代があり、新しいスペックのラケットが出現してからも打球感や飛びを気にするあまり、トッププレイヤーは新ラケットに移行することができませんでした(なお最近の流行は、フェースエリア100~110インチ、重量280g~320g、フレーム厚21mm~26mmというスペック。世界No.2のラファエルナダルが使用するバボラの「Aeropro Drive」や、最近発売されたブリジストンの「Dual Coil」などが該当する)。

その状況の中登場したラケットが「PRO STAFF 6.0 85」(フェデラーはサンプラスを破った2001年に手にしている)。このラケットには、「ダブルブレイド」製法といわれる技術が採用されます。「ダブルブレイド」とは、「二重に編まれた」や「二重構造」を意味し、グラファイトとケブラーという素材を編み上げた層と、グラファイトのみで編み上げた層の2層をフレームに使用。当時は、金属製(スチール製、アルミ製)フレームやグラスファイバー製のフレームが主流で、ダブルブレイド製法のグラファイト&ケブラーを使用したPRO STAFF 6.0 85は、大変珍しいものでした。

「PRO STAFF 6.0 85」は剛性が高く反発力の強いラケットになりながらも、選手が好んで使用してたウッドラケットのフィーリング「中身のつまった感じ」を忠実に再現。ウッドの良さを持ちながら「打ち負けないラケット」と評価され、違和感を最小にしてウッドフレームからの移行を可能としたのでした。

フェデラー自身がウッドから移行したわけではないのですが、2001年時点で手にしていたラケットは重要な歴史を持つものだったのです。

>>「パワーテニス」と「フィーリング」の葛藤>>
pro_staff_60_85_w250.jpg
フェデラー1stモデルの「PRO STAFF 6.0 85
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