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更新日:2005年01月25日

リングス活動休止から3年。カリスマの次の一手は何か 前田日明再浮上の背景(上)

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リングスの創始者前田日明が、三年ぶりに表舞台に浮上した。本格復帰への狼煙なのか、単なる顔見せに過ぎないのか? その背景にある構図と、前田が業界にもたらした功罪について分析する。


リングス崩壊の原因はPRIDEの引き抜きではない

1997年勃興した、ビッグイベント「PRIDE」の引き抜き攻勢を、前田はリングス崩壊の最大原因に言う。だが、時代をへて、現代の視点でそれを検証してみると、それはむしろ「原因」ではなく「結果」だったことがわかってくる。

確かにリングスが発掘して、後にPRIDEの主力選手となった選手は多い。
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラとエメリヤエンコ・ヒョードルのPRIDEの頂点を争う二人がリングス出身であることは、象徴的な意味合いを持つだろう。他にもダン・ヘンダーソンやギルバート・アイブルらはリングスが開催したオープントーナメント「King of Kings(K.O.K.)」のチャンピオンとして、鳴り物入りでPRIDEのリングに迎えられた経緯がある。

しかし、PRIDEはそもそも格闘技界では後発の組織であり、大資本を投入して既成の選手を一堂に会させる事で、今日の地位を作って来たイベントである。いわば「契約のクリーンになったトップ選手を高く買う」(あえて“引き抜き”とは言うまい)のは団体経営上の常套手段でもある。

例えばヴァンダレイ・シウバもマーク・コールマンも元はと言えばUFCで活躍して来た選手。また、PRIDE最初期に「霊長類最強の男」のキャッチフレーズでもてはやされたマーク・ケァーに至っては、まさにUFC参戦契約があるにもかかわらず、それを破棄してPRIDEに“移籍”。法廷闘争にまで発展している。

最近の例で言えば、“移籍攻勢”の標的は、国内最大手のK-1に移って来た。今やヘビー級トップ3の一角を担うミルコ・クロコップの“移籍”はそのまま、K-1vsPRIDEの露骨な睨み合いの構図へと発展したし、最近でもK-1 GP覇者のマーク・ハントがPRIDEに登場、K-1時代は「やる気が無い」と公言していた総合ルールでの試合をこなして周囲をあっと言わせている。

その意味では、PRIDEの“移籍攻勢”の波をかぶっていない格闘技団体は無いと言ってもいいだろう。主力選手を“移籍”で失った事の影響より、むしろ残ったメンバーで訴求力のあるイベントを組めなかった事が、リングス崩壊の大きな原因であったと考えるべきではないだろうか。

総合格闘技界にあって「世界標準スタイル」となったヴァーリトゥードルールに、最後まで前田リングスは抵抗し続けた。ロープエスケープを駆使した旧リングスルールの娯楽性や、顔面へのグラウンドパンチを排したKOKルールなど、よく言えばオリジナリティ溢れるルールを堅持し、「大勢に流される」ことを嫌ったプロデューサー=前田だが、PRIDEや修斗でVTルールのスリリングな攻防を見慣れたファンからは、リングス=「ぬるい」団体というレッテルを貼られた。

オープンフィンガーグローブを着用し、「世界標準」に半歩歩み寄った形のKOKルールにしても、UWFルールにあったシーソーゲームの、取って取られてのスリルもなければ、VTルールの「ギリギリの切迫感」もない中途半端なゲームメイクになってしまった事は否めない。

“運動体”の最前線であるという存在意義が薄れた事で、リングスはファンからも、そしてファイターからも意味ある場所ではなくなってしまったのではないだろうか。

こうして見てくると前田のプロデューサーとして資質には若干疑問符を付けざるをえない。個人のイズムは個人のイズムとして立派だが、時代やユーザーのニーズには結局歩み寄る事ができなかったからだ。無論、そうした頑固さは個人としては魅力的だし、その事が今も彼を偶像視する風潮を生んでいるのは間違えない。だが、プロデュースビジネスは、もっとフットワークの良さが必要とされる仕事だ。

「俺は何も変わらない、時代にも社会にも媚びない」

その姿勢はアーチストの感性ではあっても、ビジネスマンの感性ではなかったということに尽きる。むしろ彼のその感性を時代性の中で形にする舵取り役=プロデューサーが、別に必要だったのではないだろうか。

【後編】に続く

(執筆者:井田 英登)

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