文章:井田 英登(All About「K-1・PRIDE・格闘技」旧ガイド)
年末の格闘技三つ巴の視聴率競争は、瞬間最高視聴率43.0パーセントと驚異の数値を残したK-1“Dynamite!!”陣営の圧勝に終わった。もちろん、この瞬間だけを言えば、紅白本体を抜いてトップに躍り出た。平均視聴率の19.5%という数値もダントツで、紅白裏番組史上トップに輝いた。
関係各紙の反応はといえば、この数値で三分裂の騒動は御破算。禊は済んだというニュアンスを感じる。確かにアントニオ猪木氏の「三つで紅白を倒したと考えればいい」発言にもあるように、三団体の取った視聴率は大したものである。これをもって「ごたごたして恥ずかしい部分もあったが、概ね対世間的にはカッコがついた」といった論調に収めてしまいたい気持ちは判る。しかし、この数値が、格闘技界の勝利かと言えば、それは疑問だ。
例えば、とある年明けのスポーツ紙は、この現象にこんな見出しをを付けて痛烈な皮肉をぶつけてみせた。---曰く「曙、勝っていた」と。
その通り。
瞬間視聴率では紅白に勝利した“Dynamite!!”を称えた内容だが、ここで試合の勝者サップの名前が上がらない事を考えてみればいい。要は紅白に勝ったのは曙個人のネームバリューであり、その彼が広告塔になってサップと闘うというピエロを演じてみせたから、この数字が出たのだと言われているのである。
例えば、去年一昨年の「猪木祭り」のように、曲がりなりにもこれまで格闘技界が独自の価値観で積み重ねてきた要素で世間と対峙していたのなら喜べもしよう。だが、国技である大相撲の横綱を、WCW出身のプロレスラーであるボブ・サップと殴り合わせただけで、それを「格闘技の勝利」と喜んでいいものか? 「普段着」を強調したPRIDEが、平均12.2パーセントと意外にもコンスタントな視聴率を稼いだ事実はあるが、それにしても、最高瞬間視聴率28.7パーセントを稼ぎ出したのは“オリンピックメダリスト”の威光をまだ失っていない吉田秀彦とホイス・グレイシーの一戦。このカード自体、一回目の“Dynamite!”で組まれたカードの再戦であり、「曙vsサップ」戦の原形であったことを考えれば、やはり「対世間」で数字を上げるのは、一般的知名度の高さが全てなのだなと言う事になってくる。
むしろ、引き抜き騒動でファンをうんざりさせ、結局パッとしないカード編成で平均視聴率5.1パーセントと低迷した本家「猪木祭り」の視聴率こそが、本来の格闘技界への評価だったと言われても仕方あるまい。結局、「空前の格闘技ブーム」のピークともなったこの年末の三大イベント激突は、他のジャンルで名を残したアスリートを格闘技のフォーマットに放り込んだ“バラエティ枠”での人気でしかなかった気がする。