文章:井田 英登(All About「K-1・PRIDE・格闘技」旧ガイド)
▼【猪木祭三分裂を徹底検証/関連インデックス】
(承前)
■TV放送権争いを産んだ2002年TBS参入と高視聴率
リングの上のフォーマット変更もさることながら、大会中継が関西ローカルのMBS(毎日放送)からキー局のTBSへと移ったことも 「INOKI BOM-BA-YE 2001」の大きな特徴であった。
格闘技イベントの成功は常に地上波放送との提携がキーとなると言われるものだが、逆にこのとき支払われる莫大な放映権料をめぐる確執が、しばしば団体分裂の大きな原因になるのも事実である。後に“猪木祭分裂劇”の大きな要因となった、フジ/TBS/日テレの三すくみ構造は、この時のTBSの猪木祭獲得が元でくすぶり始めたものなのである。
当時、これといった格闘技コンテンツを持たなかったTBSは、K-1、PRIDEと二大イベントを成功に導いたフジの後塵を拝する形になり、格闘技コンテンツの獲得を迫られている状況であった。その後、日本テレビはK-1 JAPANを獲得。さらに情勢は逼迫する。元々UWF系の放映をショットで行うなど、格闘技シーンの動向には敏感なところを見せてきたTBSだが、スポーツ部門がプロレス放映に対して抵抗を持つ老舗の体質もあり、ここ十年のリアルファイトビジネスへの取り組みの足を引っ張っていたのである。(余談だが、K-1の最初のTV放映企画は大阪の系列局MBSに持ち込まれ、実現寸前まで話が進んでいたという逸話がある。その後、フジが手をあげたことでK-1は瞬く間に全国区進出を果たし、10年間両者の接近は遅れることになった。)
しかし、勢力拡大を狙う石井館長はこの流れの中で、TBSの人気番組「筋肉番付」を大成功させたプロデューサー樋口潮氏との交流を進め、「K-1 MAX」という大ヒット商品を生み出す黄金タッグ結成することになる。
元々K-1には、World GPシリーズの成功を支えてきたフジとの濃厚な関係があり、従来なら考えられない展開ではあるが、JAPANシリーズを立ち上げ日テレに預けるというアクロバットを見せた過去もある。さらに「INOKI BOM-BA-YE」、「K-1 MAX」と大会コンセプトを切り分けることでTBSに比重を移し、多局展開を狙うK-1の戦略は、フジには決して面白くないものだったに違いない。さらに、最初にJAPAN大会で「K-1vs猪木軍」の対抗戦を放映した日テレにしても、目前でとんびに油揚げを浚われた思いがあったであろう。
借金大王・安田忠雄の親子再会物語をメインの話題にするという奇策で勝負に出たこの年中継視聴率は、まさかの14.9パーセントをマーク。関係者の度肝を抜くことになった。「金になるコンテンツ」として、格闘技は完全に地上派TVのフォーマットに乗ったのである。こうなってしまえば、パクり、引き抜きは当たり前の数字至上主義のTV界の論理が幅を利かす事になる。そして各局の反目や思惑のすれ違いが、最終的に今年の三分裂劇を生み出す伏線となっていくのであった。