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ヒルマン監督が日本人から学んだ野球(2ページ目)

ヤンキース監督候補だったヒルマンだが、日本ハム監督に就任して3年間は低迷。しかし、ある日本人の特質をつかんでから2年連続リーグ制覇を果たし、念願だったメジャーの監督の座を手に入れた。その特質とは?

瀬戸口 仁

執筆者:瀬戸口 仁

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「とにかく同点に追いつく」野球を優先し、2連覇

「とにかく同点に追いつく」ための野球、それが日本人の性にあった
昨年2007年12月、台湾で行われた北京五輪出場権をかけてのアジア大会、全日本は中国、韓国を破り、最終の台湾戦を迎えていた。6回を終わり、1対2と苦戦。7回に無死満塁というチャンスを作り、打席にはロッテ・サブローが入った。この場面、アメリカ人ならば誰もが逆転満塁ホーマーを狙うだろう。満塁なだけに、相手投手は必ずストライクを取りにくるため、長打を放つ確率はグンと高くなるからだ。ところが、星野監督はスクイズのサインを出し、まずは2対2の同点とした。その後、試合の趨勢は日本の一方的なものとなり10対2と大勝、五輪切符を手にしたのである。

ここである。「とにかく同点にしたこと」が勝利へのキーワードであり、日本人の特性が生かされるターニングポイントなのだ。日本人はたいていの団体競技において、ビハインドだとシュンとして元気がない。「あぁ、負けかぁ」とネガティブな気持ちが心を占領してしまう傾向にある。

ところが、いざ同点に追いつくと俄然勢いづく。「いける!」という思いで心が充満して一気呵成となるのだ。ある意味、単純なのかもしれないが、アメリカ人のように少々のビハインドでも「我々は勝てる」という思考とは一線を画している。

ヒルマンは日本ハムの監督に就任してからの3年間、この日本人特有の性格に気が付かなかった。ところが、気付いてからの06年、07年は、「とにかく同点に追いつく」ための野球を優先し、2連覇を成し得たのである。

郷に入っては郷に従った野球を追及したおかげで、アメリカン・ドリームを叶えたヒルマン監督。ロイヤルズは決して強いチームとは言い難いが、以前に比べて細かい野球が求められているメジャーリーグなだけに、日本での経験が生かされる可能性は高い。日本を去る際に数多くの感謝の言葉を口にしたが、そこにはウソ、偽りはなかった。



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