文章:小野寺 俊明(All About「日本代表・Jリーグ」旧ガイド)
テヘランの元川悦子さんから第1報が届きました。紅白戦が行われた前々日練習後の練習レポートと選手コメントです。今までの3-5-2から4-4-2へのシステム変更をしていますが、機能していないようです。またテヘランは1300mの高地、その影響もあるようです。
●2P目 練習内容・紅白戦のレポート●3P目 選手コメント<2006 FIFAワールドカップ アジア最終予選日程>
3月25日(金)22:35 イラン代表vs.日本代表 @テヘラン
3月30日(水)19:30 日本代表vs.バーレーン代表 @埼玉スタジアム2002
※時間は日本時間
*****
ミラノからわずか4時間余り。瞬く間にテヘランに着いてしまった。これだけ距離的に近いのだから、イラン人選手がドイツなど欧州でプレーするのも頷ける。同じアジアといっても、彼らと我々極東の人間は違うのだ。
飛行機を降りる段になって、頭にショールを巻き、季節外れのベンチコートを着た。その姿を鏡で見ると、まるでドロボウのようだ。自分でも呆れるしかなかったが、外国人女性にもイラン式服装を強要するこの国やってきたのだから、もう割り切るしかない。
空港の入国審査はあっけないほど簡単だった。荷物もすぐに出てきて「今日はなかなかスムーズだ」と思っていたら、最初の事件は起きた。50ユーロを両替したら、1万リアル5枚と5000リアル115枚になって返ってきた。その分厚さたるや凄まじい。海外で両替して財布に入り切らないお金をもらったのは初めて。果たしてこれを3日間で使いきれるのだろうか。1円=約82リアルというけれど、物価がどの程度か想像もつかない。
そういう混乱状態でタクシーに乗ろうとすると、必ずといっていいほどボラれるものだ。客引きのタクシーはまずいと思い、空港のカウンターに行ったが、担当者は「20万リアルです」と平気で言う。「ガイドブックには3万5000~5万リアルと書いてある」と主張すると、「21日にノウルーズ(イラン暦の新年)を迎えたばかりだから、物価が急に上がっている」とか言いたい放題だ。結局、5万リアルで話をつけタクシーに乗り込んだが、今度はドライバーが「チップをくれ」とせがむ。そのしつこさには辟易したが、絶対に妥協しなかった。
いきなりそんな目にあったが、イラン人には悪い印象を持たなかった。ホテルのスタッフもイラン協会の人もみな女性には優しい。日本語を話せる人も多いから、こちらとしても親近感を持てる。お昼にテヘラン在住の知人のところを訪ね、イラン料理を振舞ってもらったのだが、これもまた美味だった。イランではアルメニアに近い地域の女性が料理上手。「嫁にもらうなら北部の人」ともいわれているという。
そこでイランのサッカーについて少し話を聞いた。最近のイラン代表はトップフォームではないという。36歳になったばかりのダエイは動けないし、マハダビキアもコンディションがよくないようだ。ドイツ人とのハーフで、鳴り物入りで代表入りしたザンディも期待されたほどの働きは見せていない。「今回のイラン代表は厳しいんじゃないかな」というのがもっぱらの見方らしい。
それ以上に驚いたのが、イランの子供たちのサッカー環境だった。欧州に近いだけに、さぞかし育成システムは進んでいるのだろうなと思っていたら、全然違った。イランでは子供をサッカースクールに入れられる一部の金持ちを除き、18歳くらいまではほとんどがストリートサッカーに興じている。きちんと教育を受けた指導者もおらず、環境も整っていない。イラン・プレミアリーグのトップチームであるエステグラルでさえ、専用のクラブハウスと練習場を持っていないのだという。
そんな状況だから、選手発掘システムもない。ハマダビキアやカリミはたまたまイラン協会のスカウトが見て、「いい選手だ」ということで抜擢されただけだ。「同じような選手は沢山いるのに、システムがないから見過ごされている」と現地在住の知人は言っていた。それでもアジアトップレベルを維持しているのだから恐ろしい。イランが本気で選手育成に乗り出したら、一体どんなことになるのだろうか。日本にとっては脅威だろう。
そんな情報を得た後、16時からの日本代表トレーニングに向かった。「世界最悪の渋滞都市」と悪評高いテヘランだが、この時期はノウルーズ休暇中とあって、車が少ない。何しろ500万人がテヘランを脱出したというから、それも頷ける。道路もスムーズで、トラブルもなく、アラヴィ・スタジアム横のトレーニンググランドに到着した。
少し練習開始に遅れてしまったのだが、言ってみると、恐ろしいほど多くのギャラリーやメディアが取り巻いている。すぐ隣のピッチで17時からイラン代表が練習することもあって、そちらを目当てにやってきたファンも少なくなかった。イラン代表の練習が始まると、本番さながらにラッパが鳴り響き「イ~ラン、イ~ラン」という掛け声が起きるほどの盛り上がり。あたりは奇妙な熱気に包まれていた。
この日は負傷離脱した藤田俊哉(磐田)に代わって急きょ合流した柳沢敦(メッシーナ)も元気そうな様子を見せた。彼らはいつも通りウォーミングアップを消化した後、ビブスを着て実戦的な練習に入った。
●練習内容・紅白戦の模様は次ページで