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ミステリー作家としての三雲岳斗

人気ライトノベル作家・三雲岳斗は本格ミステリーの書き手でもあります。今回は"ミステリー作家としての"著者を御紹介しましょう。

執筆者:福井 健太

3つの新人賞に選ばれた作家

『M.G.H.楽園の鏡像』
宇宙ステーションを訪れた材料工学研究家・鷲見崎凌と従妹の舞衣は、無重力の部屋で"墜落死体"を発見する。奇抜な舞台とトリックを生かしたSFミステリー。
コバルト文庫出身の岩井志麻子が日本ホラー大賞、ジャンプノベル出身の乙一が本格ミステリ大賞、ファミ通文庫でデビューした桜庭一樹が直木賞を受賞したように――あるいは津原泰水や米澤穂信の存在からも解るように――ライトノベルで登場した書き手が"一般向け"文芸で活躍するケースは増えつつある。ライトノベルと並行してミステリーを書く作家がいるのはむしろ自然なことだ。三雲岳斗もそんな作家の1人なのである。

三雲岳斗は1970年大分県生まれ。上智大学外国語学部を卒業後、サラリーマンとして働くかたわら、1998年に『コールド・ゲヘナ』で第5回電撃ゲーム小説大賞(銀賞)を受賞してデビュー。翌年に『M.G.H.楽園の鏡像』で第1回日本SF新人賞、2000年に『アース・リバース』で第5回スニーカー大賞(特別賞)を獲得――という経緯からも、その"大型新人"ぶりは明らかだろう。そして著者は(周囲の期待に応えるように)ヒット作を次々に生み出した。いわば"順当に人気作家になった実力派"というわけだ。

ライトノベルとSFミステリー

『アスラクライン』
幼馴染みの美少女に(守護霊として)憑かれている高校生・夏目智春は、この世界が悪魔の作った"二巡目の世界"であることを知ってしまう。奇想の横溢する"ハイスクールパンク"の野心作。
著者は約40冊の単行本を上梓しており(2008年1月現在)、その大多数はライトノベルのレーベル――電撃文庫と角川スニーカー文庫に属している。砂漠の惑星を舞台にした〈コールド・ゲヘナ〉、学園アクション〈レベリオン〉、学園モノとロボット戦闘を融合させた〈ランブルフィッシュ〉など、著者が多くのシリーズを持つライトノベル作家であることは間違いない。しかし――それだけではなく――『M.G.H.楽園の鏡像』では宇宙ステーション内の"墜落死"、続編『海底密室』では深海の密室殺人の謎解きを描いていた点にも目を向けるべきだろう。著者はキャラクター主導型のライトノベルだけではなく、もともと本格ミステリーと相性の良い書き手だった。そのことは近年の作品群――とりわけ『聖遺の天使』『旧宮殿にて』『少女ノイズ』で実証済みなのである。

次のページでは"一般向け"ミステリーを御紹介します。
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