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中毒注意!『ハルムスの世界』

大きな暴力によって闇に葬られても、面白い話は何度でもよみがえる。読んだらハマること請け合い! 『ハルムスの世界』へようこそ。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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スターリン政権下で闇に葬られた作品群

ハルムスの世界
<DATA>タイトル:『ハルムスの世界』出版社:ヴィレッジブックス著者:ダニイル・ハルムス価格:1,995円(税込)
読者のみなさん、この寓話についてよく考えてみよう。きっと気分が悪くなるよ。

なんという作者でしょう。でも、不思議とやな感じはしません。引用したのは、ダニイル・ハルムスの「寓話」を締めくくる文章。短編集『出来事』と、訳者が選んだ傑作コレクション38編を併せて1冊にまとめた、『ハルムスの世界』のなかに入っています。

ダニイル・ハルムスは1905年生まれ。スターリン政権下の旧ソビエト連邦で活動していた作家です。1941年に逮捕され、刑務所で死去。著書は本国では長らく発禁になっており、ペレストロイカ期にようやく解禁されたといいます。作品が日本で最初に出版されたのは1996年。『ウィリーのそりのものがたり』という絵本です。その著者紹介によれば、ハルムス(Kharms)のペンネームは、英語のチャーム(Charm・魅力)とハーム(Harm・害悪)を合わせたもの。自称しただけでなく、当局にも存在が害悪と見なされてしまったハルムス。いったい、どこが害悪だというのでしょうか。

だって、ハルムスが書いていたのは、前衛文学です。大雑把にいってしまえば、わかりやすくないし、変。放っておいても、体制に影響を与えるほど、メジャーになるとは思えません。

なのに、国家はハルムスを排除しました。なぜ?

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