文章:中野 豊(All About「名作映画」旧ガイド)
映画は時代を映し出す鏡です。たとえ歴史劇だとしても「その時代の視点と技術」によって創り込まれた外国映画が、毎年300本以上公開されています。2006年は日本映画だけで、なんと400本近く公開される勢いです(昨年が356本)。それだけ膨大な数の新作の中には、明日から「名作映画」だと言われる作品もたくさん含まれていますし、自分だけの名作映画との出会いもあるでしょう。
さて今回は、昨年(2005年)日本の一般劇場で初公開された作品から、それぞれの映画作家の代表作となり「名作映画の仲間入り」を果たしたであろう、ガイド選出のBEST10と、映画ファンとして是非観ておきたいMORE10を発表します。それではBEST10の第10位からご紹介します。
第10位:『SAYURI』
エキゾチックファンタジー映画の佳作
 |
| 日本の芸者を異国の視点で魅せる『SAYURI』 |
日本の女優が嫉妬する、花街トップの芸妓役にチャン・ツィイー、コン・リー、ミッシェル・ヨーの中国人トリオとは……。
「日本の美」がアメリカの美意識にすり替えられているように感じられましたが、本作こそがグローバルスタンダードな神秘的ジャパンなのかもしれません。美しいショットの数々やチャン・ツィイーの凛とした佇まいに魅了されました。ファンタジー映画としてみれば極上の逸品です。
・2005年/アメリカ映画
・上映時間:146min
・監督:ロブ・マーシャル
・出演:チャン・ツィイー、渡辺謙、役所広司、桃井かおり
第9位:『サマリア』
少女の心と身体の傷をえぐる問題作
 |
| 性と生の意識を問いかける、重々しい作品 |
『魚と寝る女』で一気に注目した韓国の鬼才キム・ギドク監督作品です。援助交際していた親友が死して、その彼女になりかわり援交相手にお金を返し、ついでにいたしてしまう少女が主人公。その少女の父親が刑事で、娘がホテルにいる現場を向いのホテルから目撃してしまいます。そして……。ギドク作品の痛みは肉体にだけでなく精神にも宿ります。後味は悪いけれど切ない涙がこぼれました。
・2004年/韓国映画
・上映時間:95min
・監督:キム・ギドク
・出演:クァク・チミン、ソ・ミンジョン、イ・オル
第8位:『ヒトラー ~最期の12日間~』
ドイツ自らが創ったヒトラーを描く異色作
 |
| 独裁者の最期。悪魔にも人間性は内在するのか? |
終戦間近のナチス。ヒトラーと側近達の焦り・絶望・デカダンスを地下室という密室空間で執拗に描き、ヒトラーの人間性に迫るという本作のアプローチは是か非か? ラストで秘書ユンゲ(原作者)のインタビュー場面の挿入は作り手のエクスキューズかもしれません。
ドイツが戦後のタブー「ヒトラー」と、その悪魔に盲従する人々の姿を描いた労作。賛否分かれる作品でしょう。
・2004年/ドイツ=イタリア映画
・上映時間:155min
・監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
・出演:ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ラーラ
第7位:『ビヨンドtheシー ~夢見るように歌えば~』
ゴキゲンな音楽映画!
 |
| 37歳でこの世を去ったエンタティナー、ボビー・ダーリンの物語 |
製作・監督・脚本・主演をこなす、アカデミー俳優である天才ケヴィン・スペイシーが歌って踊る(一切の吹き替えなし)ワンマン映画。
タイトルとした楽曲“ビヨンド・ザ・シー”は、ディズニー映画
『ファインディング・ニモ』のエンディング曲としても知られています。また、ボビー・ダーリンは往年のアイドルスターで女優としても成功したサンドラ・ディーの夫だったのですね。
05年は、レイ・チャールズの伝記映画
『Ray/レイ』の裏に隠れてしまって損をした本作ですが、往年のミュージカルファンにはたまらない一篇です。
・2004年/アメリカ=ドイツ=イギリス映画
・上映時間:118min
・監督:ケヴィン・スペイシー
・出演:ケヴィン・スペイシー、ケイト・ボスワース
第6位:『シンデレラマン』
貧困の時代に希望という光を灯した感動作
 |
| 暗い時代に、人々に勇気と夢を与えた男の物語 |
大恐慌時代のアメリカでのボクサー返り咲きの感動物語。真っ直ぐなストーリーと演出ですが、品格があります。本年
『ダ・ヴィンチ・コード』が話題となったロン・ハワード監督作品としては
『ビューティフル・マインド』、
『アポロ13』と並ぶ秀作です。
・2005年/アメリカ映画
・上映時間:144min
・監督:ロン・ハワード
・出演:ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー、ポール・ジアマッティ
次ページは、いよいよBEST5の発表です!