『ビューティフル ボーイ』来日会見

『ビューティフル ボーイ』(2003)[Beautiful Boxer]

昨夏の『マッハ!!!』のヒットに続くか!?タイ発のオカマのムエタイ選手の映画です。同じオカマがテーマの『アタック・ナンバーハーフ』と違いこちらは正統派。最強の元ムエタイ選手パリンヤー・ジャルーンポン（愛称：トゥム）の半生をドラマチックに映画化。キャバレーで働くようになったトゥムが自身の過去を海外メディアのインタビュアーに語る回想スタイル。

＜ジェンダー＞というテーマを扱い、主役のトゥム役に新人俳優でムエタイ選手のアッサニー・スワン氏（オカマではない）を起用し試合もタップリと15試合分をしっかりと見せている。音楽も時に心地よく、時に闘争心をあおる。女子プロレスラーの井上京子さんが本人役で、トゥムのファン役で『沙羅双樹』の兵頭祐香さん（一度お会いしたことがありますが、天真爛漫な感じでした。今回の役柄はしっとり＋大胆系で）が出演している。

＜＜タイ北部のチェンマイ。父母弟の4人家族のトゥム。カオ・マンガイ（鳥ご飯）が大好きで、幼いころからほかの男の子とすこしだけ変わっていた。髪には花をかざり、ケンカは好まず、いじめられっ子だった。そんな彼が自分の内面のあることに気づいたきっかけは、ある女性との出会いだった。＞＞

オープニングまもなくで、いきなりミニスカートでハイヒール姿の跳び蹴りを目の当たりにする。撮影ではヒールを何度も折ってしまったというシーンだ。おおー。なんとも逞しいオカマさんだ。演じたアッサニー・スワン氏は演技も初、しかもオカマの特徴（はじらい、よろこびの所作）も演じきっている。本当はオカマさんだよ、と言われても『そっかー』と思ってしまうほど。しかも（クレジットで名前を見て『ヘッ？』って思ったのだけど）劇中曲を2曲も歌っているのだから驚き！近日モデルとなったパインヤーさんと一緒に来日(8/24来日会見)するらしいデス。パリンヤーさんはある1シーンでカメオ出演されています。（監督がシーンを伏せているので、あえて書きませんが、バンコクでのシーンなのですぐに分かるでしょう）。

子供の頃から心と体の不一致を悩み、お寺で修行し、『運命ならば現世で叶えられる』の言葉を支えに生き抜く。初めての口紅との出会い、ピーニットとの出会い、ムエタイの師匠とその奥さんとの出会い、自分がどうなりたいのか、を忘れずにいたトゥム。身近な人々がトゥムの気持ちを理解しようとしていてくれて、家族（トゥムの母親役は元ミス・タイランド。どうりで美しい～）、師、仲間がいた。夢は大きくなりがち、でもそこにたどりつくまでの道が長いと、ついつい迷ってしまいがち、目の前にあることをコツコツと。当たり前のことをキチンとできるように。そして初心を忘れずに。タイ版の『リトル・ダンサー』と言いたくなるのも分かるわ～。[2005/8/19]

『ビューティフル ボーイ』
[Beautiful Boxer]
2005年10月15日[土]～ シネマスクエア東急他全国順次ロードショー
監督：エカチャイ・ウアクロンタム
出演：アッサニー・スワン、ソラポン・チャートリー、オラノン・パンヤウォン　ほか
2003年／タイ／1時間59分／アートポート配給
公式サイト：http://www.beautifulboy.jp/