文章:田中 徹夫(All About「Soul・R&B・HIP-HOP」旧ガイド)
(4)[ STEVIE WONDER ]

ごく最近、大いに涙したTVドラマがあった。
その作品名は『君の手がささやいている』(テレビ朝日系)。
ご存知の方にはともかく、ご存知の無い方に物語を軽く紹介すると……。
生まれながらに<ろうあ>というハンディキャップを背負う人生を歩む事となった主人公野辺美栄子(菅野美穂)。
それ故、彼女そして彼女の家族は、様々な差別を受け社会的逆境に晒される事に...。
幾度と無く立ち塞がる障壁。それでも彼女そして彼女の家族は諦める事無く一歩ずつ歩を進めていく。
遂には就職先で野辺博文(武田真治)と出会い、<結婚>という幸福を手に入れる事に。
新たな家庭を作り、子供を生み、順風満帆な生活を手に入れた美栄子と博文。
しかしその幸せな生活においても更なる苦境が待ち構えていた。
それを乗り越えるべく美栄子、博文そしてその両親の努力と葛藤の日々が再び始まる……。
といったもの。
観る者の感動のツボを刺激するのは、その物語に登場する主人公、例えハンディキャップを背負うとも、否だからこそ現実社会から過度に受ける重圧を押しのけ乗り越えるべく精神の強さを身に付けていくそのポジティヴな姿勢。
そしてまた、健常者と異質な存在とみなされ周辺環境から出来るだけスポイルされがちなそうした存在を、身の回りの健常者同様な存在として扱い愛をもって接する家族の愛~ヒューマニティ~。
(もちろんドラマに出演する各俳優陣の迫真の演技にも要因あり)
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話を音楽に戻そう。
R&Bファンにとっての注目は、何と言ってもこのドラマの要所要所、感動のつぼ (所謂?泣きのポイント?)を演出する音楽的効果、すなわちドラマのメイン・テーマにスティーヴィーの“心の愛(I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU)”が使用されている事だろう。
この<愛>溢れるサウンドに涙を誘われてしまう筈だ。
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‘スティーヴィー・ワンダー’という存在からイメージされるもの、まずそれは何と言っても彼が産み出す<メロディー>、その総てに描かれる美しき旋律。
前記“心の愛(I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU)”を含め、彼が創造する総ての楽曲には、間違いなく美しいメロディーが備わっている。
それは例えば、ダンス・ミュージックとして存在するリズミカルなビートを基調とし時代を映し出す鏡となるようなカラフルなサウンドとは明らかに一線を画し、彼自身の価値観に従順なオリジナリティー溢れる独自世界を形成している。
そしてそれらは、既存のフォーマットからの脱却を図り、彼のピュアイズムに依存する内的創造物として孤立した空間に存在し、時空の揺らめきにも左右されずに浮遊しているようにも思える。
それぞれに個性を与えられたそれら彼の分身達は、リスナー全ての心の琴線をやんわりと刺激し、心という入れ物の飽和を迎えるならば有無を問わず感動を呼び起こす。
それはどんな音楽ジャンルの属性をも飛び越える。
そして年代も年齢も性別も人種も問わない。
純粋に人間として存在し同じ視点を有するものならば、彼が放つヴァイヴを触れる事が出来る。
スティーヴィー・ワンダーの音楽。
ジャンルを問わず全てのリスナー及びアーティストから敬愛される理由、それはまさにそうした彼が織り成す純真な創造道義及びアーティスティックな存在によるものであるからに違いなかろう。
(次ページに続く)