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『懐かしの庭』イム・サンス監督

チ・ジニ主演の映画『懐かしの庭』が、シネマコリア2007で日本初公開となりました。社会の暗部に鋭くメスを入れることで知られるイム・サンス監督に、単独インタビュー!

執筆者:桑畑 優香

チ・ジニ主演の映画『懐かしの庭』が、シネマコリア2007で日本初公開となりました。舞台は1980年代の韓国。『ディナーの後に』や『朴大統領暗殺(原題)』など社会の暗部に鋭くメスを入れることで知られるイム・サンス監督に、映画の時代背景やチ・ジニとのエピソードなどを聞きました。


「80年代に再度光を当ててみたかった」

ストレートで熱いトークが印象的だったイム・サンス監督
ガイド:
『懐かしの庭』は、韓国の人気作家ファン・ソギョンの同名作品を原作としていますが、映画化と思い至ったきっかけを教えてください。

イム・サンス監督:
『懐かしの庭』の前に、『朴大統領暗殺(原題)』という作品を制作しました。『朴大統領暗殺』という映画は、1974年10月26日に起きた出来事を描いています。朴大統領の暗殺以後、韓国では1980年代に入ってから民主化のための闘いが起こりました。その渦中で1980年5月、光州事件が起きたのです。光州事件で新たな勢力が政権を握り、その後も10年間軍事政権との闘争が続いていたのです。韓国では1980年代の民主化運動の時代ともいわれています。
私は『朴大統領暗殺』を撮影後、大統領暗殺以後に韓国社会がどのように変化していったのか、知りたくなりました。そこで、1980代を舞台にした映画を撮りたいと思うようになったのです。80年代はまた、私が20代を送った時期でもあります。オリジナルシナリオを書くこともできたのですが、ファン・ソギョンの『懐かしの庭』が、その時代を描いた優れた小説であったため、それを脚色することにしました。
80年代を舞台にした小説はたくさんあります。80年代に実際に民主化運動にかかわっていた、若い作者が書いたものも多いのですが、自分が当事者になっている人は、客観的になるのは難しく、時にあまりにも感傷的だったりという弱点があるのです。その中で『懐かしの庭』のファン・ソギョンは60代で、客観的に描いているところが気に入ったのです。

ガイド:
当時監督は20代だったということですが、80年代はどのような人生を送っていましたか。

イム・サンス監督:
79年に高校に入り、82年に大学生になりました。80年代の大学というのは、『懐かしの庭』に出てくるようなデモが毎日行われていました。光州事件を経験した多くの学生たちは、「学生運動では社会を変えることはできない、労働者の力が必要だ」と判断し、学校を辞めて労働現場に出て行きました。80年代から韓国では労働運動が盛んになり、民主化運動と労働運動が一体化していた時代でした。私はデモをしたことは一度もありません。遠くから見ているだけでしたね。

ガイド:
遠くでデモを見ながら、自分の中で葛藤したことはありませんでしたか。

イム・サンス監督:
ありましたね。学生運動や民主化運動に参加する学生と参加しない学生たちの間でも葛藤がありました。運動に参加する学生が、参加しない学生を軽蔑する雰囲気もありましたね。何をすべきかは各自の自由なのですが、いつも自分が正しいと思う傲慢さがあったかもしれません。しかし、結局、そういった人たちの運動、犠牲……彼らは命を失ったり、監獄に送られたりもしました……によって、韓国社会が民主化を達成したのは事実です。それと同時にどのようなことが起こっていたのか、描いてみる必要があると思ったのです。

次ページでは、チ・ジニのキャスティング秘話を語ります。
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