妖精の万華鏡が織りなす奇跡の色彩 九寨溝
中国は明の時代、地理学者・徐霞客はこういった。「五岳より帰りて山を見ることなし、黄山より帰りて岳を見ることなし」。現在中国ではこんなことがいわれているという。「黄山より帰りて山を見ることなし、九寨溝より帰りて水を見ることなし」(黄山を見てしまったら他の山は見れない、九寨溝を見てしまったら他の河川・湖沼は見れない)。
今回は、標高5,000mを超える岷山(みんざん)山脈に抱かれたチベットの秘境、中国の世界遺産「九寨溝(チウチャイゴウ:きゅうさいこう)の渓谷の景観と歴史地域」をご紹介する。
チベット族に伝わる精霊と鏡の伝説
独特の青が美しい九寨溝。冷たい地下水と炭酸カルシウムのおかげで不純物が少なく透明度が高い。同時に、倒木も腐らず、その姿をいつまでも水面下に留める
九寨溝はもともと9つの村(寨)がある渓谷(溝)で、チベット族の人々が、農業や放牧をしてつつましやかに暮らしていた。彼らは九寨溝のあまりに美しい色彩からこんな伝説を伝えてきた。
昔々この深い山にある鏡岩と呼ばれる断崖絶壁に、ひとりの美しい妖精が住んでいた。あるとき悪魔がこの妖精に目をつけて、以来1,000年の間つきまとい続けた。山の女神は太陽や雲から作った鏡によって悪魔を封じようとするが、争っている最中に鏡は山の中に落ちて砕けてしまった。その破片は108に分かれて山を彩り、九寨溝の美しい湖になった。