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中学受験母が語る、my塾弁ストーリー3・後(3ページ目)

東大法学部から外資系金融機関を経て、現在フードコンサルタントとして活躍中のサカイ優佳子さん。超高学歴、食のプロのサカイさんが、お子さんの中学受験と塾弁にどのように臨まれたのでしょうか。必見です!

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

人の価値観に流されるな

サカイさんが大学受験の頃、高校の先生たちは「お前たちなら大丈夫だから」と言って日本史も明治時代まで終わっていなかったようなのんびりした環境だったが、みんなそれでも自分で勉強してちゃんと大学に合格していった。

「だからかもしれませんが、なんで中学受験ごときでここまで白熱するの? と不思議に思います。エスカレーター式の学校も、そこまでレール敷かなくてもいいんじゃないかと思うし」

人と違っていることを恐れたくない、というのがサカイ家のモットーだ。どこかの小学校のお母さんが、ランドセルの色が変わっていることを理由に子どもがいじめられるからみんなと同じ色にするという話を聞いて理解に苦しんだ。

「皆と合わせることがむしろストレスになる性分で。ひょっとすると“わがまま”なのかもしれませんが、対外的には夫がアメリカ人だからというのも、開き直れる材料なんですよ」

親がグラグラすると子どもがツラい。どこの中学を受けるというのは子どもは決められないし、分からないのだから親が揺らげば子どもが振り回される。

「塾に植えつけられた偏差値を真に受けて、『有名な学校だから鼻が高い』なんて話を聞くと何を言っているのかと思ってしまう。人がどう思うかが問題ではないのに。だって、優秀な子どもたちがあちこちからその『有名校』に入ってもその中でドロップアウトして、自信を失う子もいるんですから」

自身の通った高校も、東大合格者が多いことで有名な公立進学校だった。のんびりした校風ではあったが、「有名大学に行くことができなかった」と自分を責める者もいた。友人達の激しい葛藤を見てきたからこそ、学校が全てじゃないことをよくわかっている。

「中学受験なんて過程にすぎない。だから、こんなに子どもの成長にとって大事な時期に人の価値観に流されるな、と。子どもに無理させるな、親も無理するな、ですよ」

食の専門家から、塾へのメッセージ

発芽玄米普及プロジェクトHPより
サカイさんのレシピ、発芽玄米入りミートローフ (発芽玄米普及プロジェクトHPより)
大手塾のやり方に対して、サカイさんから一言。

「本当に子どものあり方を考えているのなら、食についてもっと注意を払ってほしい」。

母親として、食の専門家として、そして「発芽玄米」の普及大使として、子どもの夕食に何を食べさせるかは重要だと訴えてきた。

「夕食の時間に家庭で食べられないのなら、塾で用意した玄米のおにぎりを食べさせるとか、そういうアイデアがあれば親も安心なのでは、とずっと考えているんです」

玄米には子どもの生活に大きなメリットがある。

「抗ストレス効果、太りにくい、噛む回数が増えてあごの発達を助ける、咀嚼することで精神が安定すると、まさに中学受験期の子どもの食にこそ取り入れて欲しいんです」

普通の玄米よりも栄養価が高く、白米と同じように炊くことが出来る発芽玄米。このおにぎりとカフェインレスのお茶(野草茶など)を出すだけで、子どもの補食にはちょうどいいバランスだ。野菜などのおかずは、家に帰ってからゆっくり食べればいい。

「塾の姿勢は、『食事の時間は授業の合間の15分です。何を食べるのでも勝手にどうぞ』という状態。あれだけ子どもの時間を拘束しておいて、食に対して意識が向いていない」

『塾弁』として持たせるのなら、発芽玄米のおにぎりと常備菜を一品だけで充分だ。むしろ他のものを家庭でゆっくり食べることに意義がある。

「お母さんが忙しいなら、子どもが自分でおにぎりを握るのもいい。『塾弁』って、皆さん相当気合が入ってきっちり作らなきゃと思っている人も多いようですが、例えばお弁当箱を漆のものにして、そこにおにぎりと常備菜をちょっと入れるだけでも充分おいしそうにみえるものなんです」

食育のプロの視点、母の視点、妻の視点、そして、かつて受験をくぐり抜けた者としての視点。例えるなら水晶のような硬質でクリアな聡明さを感じさせるサカイさんの言葉だが、ご本人は大変な努力の人だと感じさせられた。

自分のキャリアと周囲との上手な折り合いのつけ方や、お子さんへの眼差しの温かさから感じられるものは、けっしてサカイさん本人が謙遜して口にする「わがまま」ではない。むしろ悩んで葛藤して模索してきたという道程。だからこそ“我流”に決着したのだとも言えるが、敢えて人と違うことを恐れないサカイさんの言葉と経験から私たちが学ぶものは、とても大きい。



サカイ 優佳子(さかい ゆかこ) フードコンサルタント

1962年生まれ 千葉県出身。
東京大学法学部卒業後、外資系金融機関に勤務、その後フードコンサルタントとして活躍中。

旅が大好きで、人と、おいしいものとの出会いは人生における大きな幸せと考えている。食べる楽しさ、料理する喜びを伝えたいという思いから、五感で味わうことを基本にした食育プログラム「食の探偵団」を田平恵美とともに主宰。雑誌、テレビ、講演会などでも活躍中。二児の母。ブログ「サカイ優佳子のおいしいblog」公開中。

個人HP Yukako's Cooking with Herbs and Spices

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