ステーショナリー・文房具/ボールペンを愉しむ

NASAが認めた宇宙でも書けるボールペン

世界初の有人月面着陸、アポロ11号の時に使われたボールペン、フィッシャースペースペンAG-7。極限状態の無重力を耐え抜いた信頼の1本をご紹介します。

土橋 正

執筆者:土橋 正

ステーショナリーガイド

 

フィッシャースペースペン AG-7
フィッシャー スペースペン AG-7

今や日本人宇宙飛行士もたくさん誕生して、宇宙は私たちにとって少しばかり身近な存在になりつつある。実際、最近では一般の私たちでもお金と訓練さえつめば宇宙旅行も夢の世界ではなくなってきている。今回は、そんなロマンある宇宙空間の中で書けるボールペン、フィッシャースペースペンをご紹介したい。


アポロ11号で使われたボールペン

 

フィッシャー スペースペンAG-7
アポロ11号でその実力を実証した伝説のボールペン

1969年世界で初めて有人月面着陸を成功させたアポロ11号。この時に使われたのが、このフィッシャースペースペンAG-7だ。当時、NASAから宇宙でも書けるボールペンを作って欲しいという依頼を受け、フィッシャー社が100万ドルもの巨費を投じて開発したものだ。宇宙で書けるボールペンとして30年以上経った今も、NASAが認めている唯一のペンなのだ。


そもそも宇宙用のボールペンはなぜ必要なのか?

ここで、純粋な疑問をお持ちになる方もいらっしゃることだろう。「なぜ、宇宙で書けるボールペンがわざわざ必要だったのか。普通のボールペンではなぜだめなのか。」

ご存知のように、宇宙は無重力。私たちが普段使っているボールペンは実は、重力を使ってインクがペン先に出てくる。何気なくボールペンを使っている時には、自然にペン先は下側を向いているので、無意識のうちに重力の恩恵を受けている。この重力に頼ったボールペンを無重力の場に持っていっても書けなくなってしまうのは、容易に想像していただけるだろう。という訳で、宇宙用のボールペンが必要だったのだ。


宇宙で書けるその秘密は

 

フィッシャー スペースペンAG-7
無重力でも書けるその秘密は、
このインクカートリッジにある。

では、このスペースペンは無重力という問題をどのように解決したかというと、その秘密はプレシュライズド インクカートリッジという代物に隠されている。密閉されたインクカートリッジの中には、インクとともに窒素ガスが充填されている。カートリッジ内の窒素ガスは一定の圧力で保たれており、その圧力によって常にペン先側にインクが出てくるというものだ。

 

フィッシャー スペースペンAG-7
密閉されたインクカートリッジの中には
窒素ガスが充てんされている。


>>次のページでは、スペースペンの威力を日常生活の中で活かす方法をご紹介
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