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キャップトゥとは? ビジネスシューズとしても使えるメンズの革靴

キャップトゥとは、メンズに人気の革靴。ビジネスシューズや冠婚葬祭にも使われるストレートチップに代表される革靴の種類です。畏まったシーンに使える黒の外羽式だけでなく、プライベートな私服のときに履きたくなる茶色の内羽式などもご紹介。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

キャップトゥには様々な種類がある

キャップトゥとはメンズのビジネスシーンでも使える人気の革靴
これらは全てキャップトウと呼ばれるものです。プレーントウの時と同様、全てイギリス製ですが、それぞれの靴で雰囲気はやはり随分異なります。

これらの3種類の靴は、いずれも「キャップトウ」と呼ばれているもの。爪先の縫い目にのみ表情をつけたスタイルの靴を、こう総称します。

こちらも厳密には、足を紐ではなくバックルやゴムで固定する靴にも存在するのですが、今回も紐靴のものについて、詳しく見てみましょう。
 
<目次>
 

ストレートチップは冠婚葬祭やビジネスシーンに最適

チャーチのコンスル
ストレートチップの国際標準とも言えた、チャーチのコンスル。これは名作「73」ラストを用いた旧モデル。「173」木型で展開する現行品は当初「オズボーン」と言う名でデビューしましたが、2007年秋からはそのモデルに「コンスル」の名を冠しています。


上の写真のように、爪先に一文字状のステッチングのみを施したスタイルの靴を、「ストレートチップ」と呼びます。ご年配の方を中心に、「一文字」の愛称で親しまれている方も多いかもしれません。キャップトウの代表格と言っても過言ではなく、この靴で真っ先に思い浮かべるのは、恐らく内羽根式の黒のものでしょう。

なぜなら内羽根式の黒のこの靴は、ビジネス用としてだけでなく、礼装用としても不可欠な、「特別なもの」だからです。厳密にはモーニングなどの「昼間の儀式用の礼装」に合わせる靴の模範解答になります。鼻筋に線がシャープに通ったような凛々しい印象を与えるので、確かに個人的にも、このスタイルは内羽根式のプレーントウと同様茶系は眼中になく黒のみ、使う場面もセミフォーマルユース以上のかしこまった場に限りたくなります。

だからでしょうか、日本では1980年代までは、この靴は茶系のものがほとんど売られていなかった記憶があります。日本のお店で茶系のこの靴が増えてきたのは、イギリスやアメリカ東海岸ではなくイタリアの男性の装いに強い影響を受けるようになった、1990年代以降になってからです。
 

パンチドキャップトゥは華やかさな仕上がりで私服にも使える

エドワード グリーンのバークレイ
パンチドキャップトウの代表選手、エドワード グリーンのバークレイ。チェスナットブラウンの色合いが、スタイルの華やかさを一層引き立てます。


爪先にストレートチップのようなステッチングではなく、一文字状のブローギング(穴飾り)のみを施したスタイルの靴を「パンチドキャップトウ」と呼びます。ストレートチップとの違いは本当に極僅かですが、こちらの靴の方が、何となく華やいだ表情が加わる気がしないでもありません。

内羽根式の黒の場合、ストレートチップに比べ格式はわずかに落ちるようですが、よほどのフォーマルな場でない限り代用は十分可能です。この種の靴の発祥地であるイギリスの老舗の靴店に行っても、大抵の場合どちらの靴も”Cap Toe”で同格の扱いです。

とは言え温和な雰囲気も加味されるので、詳しくは後述しますが、これならば黒でもフォーマル用に限る必要もなく、ビジネス用にも兼用できるかと思います。また、ご覧の通り茶系の靴でもかなり高貴な印象を与えますので、こちらは平日のビジネスユースのみならず、畏まり過ぎない程度に誠意を示したい場を、土日にプライベートに訪問する際などに最適でしょう。
 

キャップトゥはやっぱりきちんと履きたくなる靴

内羽根キャップトウの模範的な履き方
黒の内羽根式のキャップトウは、やはりカチッとした履き方が一番似合います。黒のプレーントウで「履き回す」のを覚えたら、いざと言う場に備え、必ずワードローブに揃えたい一足です

今まで挙げた通り、この「キャップトウ」と言う靴は、どうしても畏まったイメージが先頭に出てきます。なので合わせる服も、例えば黒の内羽根式ならば素直に「昼間の儀式用の礼装」か、ビジネススーツでもチャコールグレイか濃紺の無地のもの、すなわち世間で言う「略礼装」として通じる装いまでが、やはり相応しいと思います。

茶系の内羽根式はフォーマルユースには使えませんが、黒に比べると使用出来る範囲は広くなります。例えば紺のブレザーをグレイ無地のトラウザーズとの組合せで、それこそダークスーツと同様な雰囲気で着こなしたい時には、最良の友になるはずです。もちろん無地のビジネススーツにも大丈夫。ただ流石にジャケットがチェック系になってしまうと、この靴の持つ凛々しさとは釣り合いが取れなくなります。

なお、ついでながら申し上げておくと、内閣の認証式のように、自然界では真夜中であってもその「場」は真昼と見なして執り行う儀式では、着用するのは常に昼間の礼装です。ファッション雑誌などでは礼装は「昼か夜かで着分けるように」と書かれている場合が多いので、これ、結構誤解されたり時に嘲笑の対象になったりすることが多いのです。これを解く鍵は「何故昼と夜で着分けるのか?」の理由をしっかり知ることなのですが、そこまでは触れていないものばかりですよね。

その答えは何とも単純で、「人間は昼間にやることと夜間にやることが、本来は根本的に違うから」なのです。人間は普通、昼は仕事をし、夜は宴に興じるものなので、相応しい服も当然ながら変わる、という発想なのです。先述の内閣の認証式も、本来は昼に行う仕事=儀式ゆえに、装いも然りなわけです。服飾の歴史的経緯の複雑さや国ごとの生活習慣から一概には言い切れないものの、礼装は昼か夜かだけでなく「(本来は昼に行う)儀式なのか(本来は夜に行う)なのか」を合わせて考えた方が、遥かに腑に落ちますよ。
 

この靴もキャップトゥ?

アルフレッド サージェントのコールドストリーム
このアルフレッド サージェントのものに限らず、外羽根のキャップトウは、イギリスの典型的なカントリーシューズのスタイルでもあります。分厚いソールに分厚いアッパーが、いかにも!


えっ、一足紹介を忘れていませんかって? そうでした。キャップトウ、特にストレートチップには、上の写真のようなカントリー仕様のものも、意外や意外特にイギリスの靴に結構あるのです。他の紐靴と同様、キャップトウも内羽根式のものに比べ外羽根式は、黒であれ茶であれ若干カジュアルな雰囲気が出るのですが、ここまで行くと黒の内羽根式のものが持つフォーマルな印象とのキャップならぬギャップに、驚かれる方もいらっしゃるでしょう。

実はこれ、紳士靴の歴史的変化がもたらした当然の帰結なのです。紳士靴のつま先に芯(Toe Cap)が入りだしたのが1860年代なのですが、キャップトウはその芯を入れる際に目安とした線がそのままデザインになったと言う説もあり、1880年代には用途に限らず靴のスタイルとして大変人気が出たようです。

一旦人気が出たものが、やがて格式を持つようになってしまうのは服飾史の常で、このキャップトウの短靴も、黒の内羽根式のものがボタンアップブーツなどに代わりフォーマル用の地位にまで上り詰めたのは、ほぼ第一次大戦の後。それほど古いことではないのです。

だからカントリー仕様のものがあっても、全くおかしくないのです。むしろこんな無骨なものの方が、キャップトウの古の素朴な面持ちが強く残っている気がします。茶系の内羽根式のもので、個人的にはパンチドキャップトウは大好きなのにストレートチップを持ちたがらないのは、この靴の存在が大きいのかも?

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