
「マネーで学ぶ英語」オバマやグリーン・スパンなど著名人の発言からマネーと英語を学べるという一石二鳥な連載。自然と記憶に残るようなフレーズと分かりやすい解釈つきだから、マネーと英語を同時に学ぶなんて難しい!なんてことは心配無用。
マネーで学ぶ英語
更新日:2009年10月30日
インフレ懸念がありやなしや、というのは米国でも論争になっていて結論が出ていません。ノーベル経済学者にしてコラムの名手、ポール・クルーグマン教授は"hyperinflation is just around corner(ハイパーインフレがすぐそこまで来ている)"と表現。でもこの表現で彼がいいたいのは、インフレが近づいているとは思っていないということ。なぜでしょうか。
Suddenly it seems as if everyone is talking about inflation. Stern opinion pieces warn that hyperinflation is just around the corner.
ハイパーインフレがすぐそこまで来ていると厳しい調子で警告をする意見もあって、まるで誰も彼もインフレについて突然話し始めたようだ。
hyperinflation is just around the corner. 「ハイパーインフレがすぐそこまで来ている」
ノーベル経済学者にしてコラムの名手、ポール・クルーグマン教授の文章から、今回押さえておきたい表現は、"hyperinflation is just around corner"というもの。日本語に訳してしまうと、「ハイパーインフレがすぐそこまで来ている」と味も素っ気もない表現になってしまいますが、原文では"just around corner"、つまり、「そこの曲がり角のところまで来ている」、とビジュアルな表現になっています。ポイントは、「曲がり角」(corner)というところ。近づいてきていそうなんだけど、なにせ曲がり角の向こうだからハッキリとは見えない、つまり、確証はないと言うニュアンスになっています。
上記のように、クルーグマン教授が「曲がり角の向こうなんでハッキリしない」と言う表現を使ったのは、実は彼自身はインフレが近づいているとは思っていないため。コラムの最後には、“the only thing we have to fear is inflation fear itself (我々が唯一恐れなければならないのは、インフレへの恐れそのものである)”と、米国の大統領の名セリフを借りて、インフレ懸念を明確に否定しています。
「んー、でも…?」
と、前回までの連載を読んできた人ならばちょっと不思議に思うかもしれません。だって、経済ダイヤモンドモデルが示すのは、金利が低くなれば物価が上昇するというメカニズム。米国が今のような超低金利を続けていけば、ハイパーかどうかはともかく、インフレは起きそうなものですが…
「いや、それは通常時でしょ?今は普通じゃないから、そうはならないよ。実際、日本だってインフレどころかデフレ傾向だったじゃない?ゼロ金利政策を採ってたって」、と言うのがクルーグマン教授の言い分ですが…
というのが、ひょっとしたらマネーで英語の一番面白い部分かもしれません。というのは、インフレ懸念がありやなしや、というのは米国でも論争になっていて結論が出ていないのです。たとえクルーグマン教授がノーベル経済学者だからと言って、健全な反論が出るのが英語の世界の面白いところ。「それでもインフレは来る!」という立場の人からは別の解釈があって、端から見てると「真実はどこに?」と考えさせられます。実際、今回取り上げた文を読んでも、スルドイ人はクルーグマン教授が反対の立場の人を揶揄するニュアンスが読みとれるはずですよね。
マネーで英語を学びつつこんな「論戦」を楽しむことができると、経済の見方も一歩深くなるのではないでしょうか。
今回はインフレがメインの話題でしたから、経済ダイヤモンドモデルでは金利と物価にスポットライトが当てられています。さらに今回は、今の状況下で経済ダイヤモンドモデルが平常時のメカニズムを維持しているのか、それとも例外的な動きをしているのか、が議論されていることを読みとれると良いですね。上記で説明したように、クルーグマン教授は「例外的な動き派」ですが、「平常時派」との論争はまだ続きそうです。
と言うときに、「もっとシンプルに考えても良いんじゃない?」というツッコミを入れているのが、「賢者」と呼ばれるあの人。マネーの世界ではもっとも尊敬されている一人ですから、次回、お楽しみに!
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