文章:岩貞るみこ(All About「コンパクトカー」旧ガイド)

世界初のエンジンと電気モーターを搭載したハイブリッドカー・プリウスがフルモデルチェンジした。こういった新しい技術は日進月歩で、どんどん凄まじい勢いで進化していく。当然、今回のプリウスも先代に比べ高い技術が搭載されている。特にクルマ業界の技術者を震撼させたのは、モーターの出力を倍近く上げたということ。単純なことに思えるけれど、これは技術的にめっちゃ難しいものらしい。この技術の確立によってトヨタはハイブリッドカー・メーカーとして他社に大きく水を開けたといえる。
しかし。クルマは技術で乗るもんじゃなし。では実際のところクルマとしてどうなのよ、である。まずカタチ。これは個人的好みを大きく反映するのでなんとも言い難いけれど、リアのガラスまで開く5ドア、というのは日本の市場にはあまり受け入れられないカタチ。なんでこのカタチに? というのはあとで書くとして、私も個人的には「もうひと声」「もうちょい色気を」という気分である。
でもインテリアは機能的なシンプルデザインで好き。かつ、使いやすい。プッシュボタン式のスタータースイッチや、指先でちょこっと動かすシフトレバーなど、一歩先行くクルマに乗っているという満足感を満たしてくれる。上下が狭い楕円形のハンドルも計器類が見やすくて握りやすく、コロンブスの卵的アイディアである。
次にリアシート。これは×。なんと天井が低くて狭いのだ。ちなみに私の身長は170センチだけれど、それでもリアシートにぴったり身を沈めるとアタマがこそばゆい。これで体格のいい男性が乗ったら結果は自ずと知れたこと。なぜ、こんなに狭いのか? それはデザインと密接な関係あり。このなだらかなルーフラインを描くスタイルでは、これよりリアシート部分の天井を高くできなかったのである。
ところが走り。これはすご~くいい。まず加速。ガソリン・エンジンは出だしのパワーが出にくいけれど、その部分をモーターがフォロー。お互いに苦手なところを補い合うよう働くので、実にスムーズで、しかもパワフルな走りになるのである。モーター出力が倍になったというのも、このあたりを大きくバックアップしており、技術は素晴らしいとため息が出る。そしてこの走りにして目が点になるような燃費のよさ。これがハイブリッドカーの目的でもあるので当然といえば当然なのだが、先日、私が試乗したときは、一般道&高速をきっちり法定速度を守り、かつ、それなりに燃費を気にしてアクセルワークをおだやかにしてみたら、リッターあたり35キロ! 一般道は渋滞のない郊外の道だったとはいえ、素晴らしい数字がリアルワールドでも出てきたのである。
さて、ここでデザインの話に戻ろう。なぜプリウスはこのカタチなのか? それは「空力」なのだ。風当たりが強ければそれだけ燃費は落ちる。北米や欧州といったアウトバーンやフリーウェイを一定速度で走るシチュエーションでは、空力をよくすると確実に燃費に効いてくる。今後、プリウスを世界的にデビューさせるとなれば、各国の道路事情を加味した機能を持たせるのは当然といえば当然のことなのである。
各国の事情。そして私の好み。これはかなりどうでもよくて、そして大きな問題となり得る。クルマはある程度、平均値で作られるけれど、その平均をつくる元になるユーザーの個人差は大きいからだ。私としてはやっぱりクルマはカタチで乗るもの。ついでに後ろの人にもゆったり座っていて欲しい。北米&欧州もいいけれど、燃費はもう少し落ちてもいいからデザイン的にもう少し色気があって、リアシートがちゃんと座れるクルマにしてもらいたかったなあと思ってしまう。もっともハイブリッド技術がもっといろいろなクルマに展開していって、ハイブリッドカーの中でもワゴンやコンパクトカーというふうに選べるようになれば、なにを犠牲にしてなにをとるか、というトヨタの悩みも、我々ユーザーのワガママも吸収されると思うんだけれど。
燃費がいい、爽快な加速感もいい、ついでにオプションで搭載できる自動パーキングシステムも使えるし、モーターで走ることをちょっとのあいだ強制できるEVモードも車庫入れのとき静かだわ排ガスも出ないわで素敵。総合点はすっごく高いんだけど、スタイルが~……。だけどこれって、平均からずれた私の好みがひっかかるだけなのかもしれないんだけどね。
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