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繊細な彫金をほどこした20世紀初頭のアンティーク ティファニー、幻の婚約指輪(2ページ目)

婚約指輪の代名詞、《ティファニー》のダイヤモンド・リング。今ではシンプルでモダンなデザインが主流となったこのブランドも、100年前はこんなにロマンティックな指輪をつくっていたのです。

執筆者:本間 恵子

19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて、プラチナを使った極めて繊細なジュエリーが、ヨーロッパやアメリカを席巻していました。“ガーランド(花手綱)”“エドワーディアン(エドワード王朝風)”と呼ばれるスタイルです。この指輪のデザインは、まさにこのスタイルに当てはまります。

 

 

左:《ティファニー》エンゲージメント・リング
プラチナ/ダイヤモンド ¥3,000,000

右:エタニティ・リング
プラチナ/ダイヤモンド ¥350,000
※同時期のものですが、これはティファニー社製ではありません。

■お問い合わせは、
ヴィクトリアン ボックス 電話 03-3494-6768 へ。

オープン・セッティングで十分に光が入るように留められた、大粒のダイヤモンド。プラチナの縁には小さなビーズ状の彫金“ミルグレーン”がほどこされています。ダイヤモンドの形状は、オールド・ヨーロピアン・カット。現在のラウンド・ブリリアント・カットが成立する以前の、古いカッティングです。

現在の日本で高い人気を誇っているのは、これ以上はないくらいミニマイズされ、画一化された婚約指輪。ダイヤモンドはどれも“エクセレント・カット”に執拗なまでにこだわった、個性のない石ばかり。このアンティーク・リングは、その対極にあるといえるでしょう。

ベル・エポック期の王侯貴族たちが愛した、夢見るような優しく甘いデザイン。オールド・ヨーロピアン・カットのダイヤモンドは、とても質のよい原石が使われているため、深みのある優美な光輝を放ちます。光学的に計算された現在のラウンド・ブリリアント・カットとは違い、ギラギラした強い光はありませんが、存在感ではまるで負けていないことに驚かされます。

しかし1914年、戦争という大きな波が世界を呑み込むとともに、このエレガンスを極めたガーランド・スタイルの技術と構想は消え去り、二度と復興することはありませんでした。現在のティファニーに足を運んでも、もうこのような美しい指輪との出会いは望めません。

20世紀初頭のほんのわずかな間に隆盛した繊細なプラチナ細工は、もはやアンティーク・ジュエリー・ショップやオークション・ハウス、博物館でしか見られなくなりました。そして、それらを身に着けていた王族や貴族、ブルジョアジーのしとやかな女性たちも、どうやら今ではとても珍しい存在になってしまったようです。

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