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街歩きのお供にご朱印帳はいかが

昨年の夏、鎌倉は鶴岡八幡宮で見かけたご朱印帳をきっかけに私の街歩きに新しい楽しみが加わりました。それがご朱印収集。寺社の歴史を知ることは街をより深く知ることでもありますから、街に関心のある方にはお勧めの趣味です。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

寺社を知ると街の歴史が分かる
意外な場所に由緒ある寺社も

右は佐渡の妙宣寺、左は神田明神のご朱印。神社の場合には神社名が記されるのが一般的

右は佐渡の妙宣寺、左は神田明神のご朱印。神社の場合には神社名が記されるのが一般的。授与に際しては300円ほどを納める

ご朱印の起源には諸説ありますが、有力な説は寺院に納経(写経を納めること)した際の受付印だったというもの。神社もそれに倣い、やがて、寺社に参詣した証=ご朱印となったというのです。そのため、現在でも納経しなければご朱印授与はなしとする寺院もあり、また、寺院と神社ではご朱印の意味が違うから、別々の帳面でなければ授与しないという場合もあります。そもそも、僧侶や神職が書いてくださるものですから、大事に扱うべきものであり、単なるスタンプラリーとはまったく異なるものなのです。


寺院の場合にはその寺によって書かれる文言が異なる。右から赤穂義士の墓所のある高輪の泉岳寺、京都の建仁寺、九品仏にある浄真寺のご朱印

寺院の場合にはその寺によって書かれる文言が異なる。右から赤穂義士の墓所のある高輪の泉岳寺、京都の建仁寺、九品仏にある浄真寺のご朱印。宗派によってはご朱印授与はしないという寺院もある

そのため、最初はちょっと敷居が高い気がしていたのですが、集め始めてみると、これが面白い。私の場合、街の取材に行く前には地図を用意、見に行く場所を事前に調べてから行くのですが、その際に寺社も合わせて下調べします。すると、意外に寺社が多い場所があったり、新しい住宅街のように思われているけれど、実は歴史ある寺社がある街があったりと、これまでとは違う発見があるのです。





第一京浜沿いにある品川神社。境内には江戸時代に信仰された富士塚(富士山を模した小山)もある

第一京浜沿いにある品川神社。境内には江戸時代に信仰された富士塚(富士山を模した小山)もある

例えば京浜急行線の新馬場以遠には寺社が非常に多いのですが、考えてみると同沿線は旧東海道沿い。そのため、古くから人が住み、寺社があったわけですが、そうとは分かっていても小さな、あまり知られていない駅の近くに、品川神社のような由緒、格式ある神社があることには驚かされます。




師岡熊野神社。神殿に吊るされた提灯にも三本足の烏の印がある。大倉山駅から歩いて7~8分、小高い丘の上にある

師岡熊野神社。神殿に吊るされた提灯にも三つ足の烏の印がある。大倉山駅から歩いて7~8分、小高い丘の上、鬱蒼たる森を背負う場所にある

あるいはギリシャ風の街並みで知られる東急東横線大倉山は比較的新しい街のように思われがちですが、ここには奈良時代創建という師岡熊野神社が。ちなみにここのご社紋はサッカー日本代表チームの胸に飾られている「三つ足烏」(八咫烏 やたがらすとも)。この神社が横浜北部の守り神であることもあり、師岡熊野神社では日本サッカー協会公認のサッカー守りを頒布しており、関係者の参詣も多いとか。このお守りは通信販売もされています。

寺社は条件の良い高台、
緑の多い場所にある

虎ノ門の近くにある愛宕神社。正面の急な階段は元々は武蔵野台地と東京低地の間にある海食崖。海に突き出した高台上に神社を作ったというわけだ

虎ノ門の近くにある愛宕神社。正面の急な階段は元々は武蔵野台地と東京低地の間にあった海食崖。海に突き出した高台上に神社を作ったというわけだ

寺社に行ってみるとその街の地形が分かるというメリットもあります。ご存知のように寺社はその街で一番条件の良い高台に立地しています。特に現在も僧、神職が常駐しており、ご朱印を授与していただけるような寺社であれば間違いなく、高台立地。そこから周辺を見下ろしてみれば土地の高低は分かりやすいというもの。さらに寺社の近くに住めば、地盤的にはかなり安心できるはずです。




場所によっては猫のほかに、狸その他の小動物も住んでいるらしい。また、夏に行くと蚊も多いのでご用心

場所によっては猫のほかに、狸その他の小動物も住んでいるらしい。また、夏に行くと蚊も多いのでご用心

寺社の近くのもうひとつのメリットは緑が豊富なこと。例えば渋谷最古の神社、渋谷氷川神社の4000坪もの境内には巨木と言うにふさわしい木々が生い茂り、明治通りから1本入っただけとは思えない静けさが味わえます。都心の緑の一部は寺社によって守られているのでしょう。また、静かでのんびりできる場所だからでしょう、猫が多いのも寺社の風景です。


祭りの時だけ神職がやってくる神社も多く、一人で複数の神社を担当する神職も少なくない

祭りの時だけ神職がやってくる神社も多く、一人で複数の神社を担当する神職も少なくない

その一方で訪れる人もなく、さびれている神社も少なくありません。最近ではお祭りで神輿を担ぐ地元の人が減って祭りができなくなったという話もよく聞きます。それは地元のコミュニティが機能しなくなっている証左でもあり、マイナス面での街の情報のひとつと言えるかもしれません。




墨と朱の美しさも
ご朱印集めの魅力のひとつ

左から時計回りに京都・建仁寺、大田区・穴守稲荷、文京区・湯島天神、新潟・弥彦神社、鎌倉・鶴岡八幡宮のご朱印帳

左から時計回りに京都・建仁寺、大田区・穴守稲荷、文京区・湯島天神、新潟・弥彦神社、鎌倉・鶴岡八幡宮のご朱印帳。ご朱印帳以外にはご朱印授与はしないという寺社もあるので、できるだけ持参しよう

とまあ、能書きはそれとして、趣味としてのご朱印の魅力は墨と朱だけでシンプルに構成されているにも関わらず、美しいということ。寺社によってはオリジナルなご朱印帳が用意されており、つい集めたくなってしまうこと。記念写真よりもコンパクトに旅の思い出を残しておけること。年代、地域に限定されず、いつまでも続けられることなどなど。寺社を訪れる機会があったら、ぜひ一度頂いてみてください。新しい趣味の世界が開けるかもしれませんよ。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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