寺・神社/中国・四国・九州の寺・神社

石仏界の王様、臼杵石仏

大分県にある臼杵石仏は、石で造られた仏像の中では、はじめて国宝に指定されたものです。田園の中にある里山に、60体以上の見事な磨崖仏があり、不思議な光景を作り出しています。いつごろ誰がどんなふうに造ったかは謎に包まれている、ロマンの地でもあります。

吉田 さらさ

執筆者:吉田 さらさ

寺・神社ガイド

日本では、石仏の評価が比較的低い

近年の仏像ブームで、京都や奈良の有名な寺は、ますます拝観者が増えたようです。それらの寺では、世にも立派なお堂や堅牢な収蔵庫内に仏像が祀られています。しかし実は、建物の中にある仏像だけが優れているわけではありません。わたしは、戸外にある石仏も大好きで、どこの寺に行っても、境内の片隅をチェックします。すると、たいていは、ひっそりとお地蔵さんや如意輪観音像がいらっしゃいます。よく見ればとても美しかったりかわいかったり、はたまた面白かったりするのに、なぜ、日本では、木製の仏像ばかりがもてはやされるのか?
大分県国東半島の熊野磨崖仏。7メートル近い巨大な仏様です

大分県国東半島の熊野磨崖仏。7メートル近い巨大な仏様です

いや、もちろん、木製の立派な仏像も大好きですが、日本における石仏は、少し過小評価気味な気がします。インドや中国や韓国では、むしろ石の仏像が主流なのに、ちょっと不思議ですね。

大分県は、石仏好きの天国

仏像マニアの中では少数派の石仏好きが泣いて喜ぶ聖地があります。それは、大分県です。大分には、まず、国東半島という石仏でいっぱいのエリアがあります。こちらは、あまりほかで見ることができない石の仁王様で有名で、空港にそのレプリカが飾られているほどです。磨崖仏も巨大なものがいくつもありますが、半島全体が山がちなので、車で行ったとしても、一部は歩く覚悟でお出かけください。
両子寺山門。国東の寺の山門は、よく、石の仁王様に守られています

両子寺山門。国東の寺の山門は、よく、石の仁王様に守られています

臼杵は風情のある小京都

臼杵は風情のある小京都

そしてもうひとつ、大分県には、石仏界の王様、臼杵石仏があります。臼杵にはキリシタン大名大友宗麟が1563年に築城した臼杵城があり、城下町として栄えた町です。

駅から近いところに城跡や古い町並みがあるので、まずはひと歩き。石垣や石畳の道、三重塔などが残る、風情のある町です。古い町のため、寺や神社も数多いので、ゆっくり探索してみましょう。


謎に包まれた臼杵石仏

臼杵石仏は、JRの臼杵駅からバスかタクシーで10分程度の田園地帯にあります。なだらかな里山に60体以上の磨崖仏があり、そのうち59体が国宝に指定されています。ちなみに、こちらの石仏が国宝になったのは、1995年のこと。石仏の国宝指定は、これが全国初のことです。

60余体の磨崖仏は、ホキ石仏第一群、ホキ石仏第二群、山王山石仏群、古園石仏群の4つのパートに分かれ、それぞれに、覆い屋で守られています。石仏は磨耗しやすいので、こうして屋根をつけて風雨から守るのです。それぞれにたくさんの石仏が並んでおり、見事のひとことです。
傑作ぞろいのホキ石仏代一群

傑作ぞろいのホキ石仏第一群

いつ誰がこれらの石仏を作ったのか。それは謎に包まれています。真名野長者が、娘(般若姫)の死の供養の為に中国から来た蓮城法師に造らせたという伝説がありますが、それは史実として確認されたわけではなく、平安末期から鎌倉時代にかけて彫られたということしか分かっていません。いずれにせよ、これほどの規模と質の石仏を作り上げるには、相当の労力と歳月を要したことと思います。

4つのパートの中で一番有名なのは、最後にある古園石仏群です。中央の大日如来像のお顔が印象深く、臼杵のシンボルともなっています。実は、この仏様のお顔は、国宝指定に先駆けた大修復のときまでは、胴体から落ちて地上にありました。この様子を見慣れた地元の方々からは、「頭部が落ちた状態で長年親しまれたものを、いまさら元に戻すなんて」という異論もあったそうです。覆い屋内には、頭部が落ちた様子の写真もあるので、現在の様子と比較できます。皆さんは、どちらがお好き?
現在の大日如来

現在の大日如来

首が落ちた状態の大日如来(覆い屋内の写真を写しました)

首が落ちた状態の大日如来(覆い屋内の写真を写しました)


周辺も歩いてみよう

下半身が土にめり込んだ仁王様

下半身が土にめり込んだ仁王様

石仏群のある里山の向こうには広々とした野原をメインとする石仏公園広がり、徒歩数分内に見所が点在しています。まずは満月寺(まんがつじ)。

臼杵石仏を作ったとされる伝説の真名長者の発願により創建されたといいます。こちらには、腰から下が土に埋まったユニークな石の仁王像や、真名長者夫妻とされる石像があります。
どこまでも広がる見事なハス田

どこまでも広がる見事なハス田

ハス田で発見した田の神さぁ

ハス田で発見した田の神さぁ

その近くには、7月から8月に見事な花を咲かせるハス田もあります。極楽浄土のような風景の片隅に、かわいらしい石像を発見しました。はっきりしたことは分かりませんが、これはおそらく仏様ではなく、「田の神さぁ」(たのかんさぁ)と呼ばれる田んぼの守り神だと思います。田の神さぁは、農村の人々が、豊作への祈りをこめて建立するものです。鹿児島県、宮崎県などの南九州でよく見られるようですが、大分でもお会いできるとは知らなかった! 比較的新しいものにも見えますが、かわいい笑顔に暑さも忘れます。

もうひとつ、必ず見てほしいのは、国道から臼杵石仏の入り口に向かう道すがらの田んぼの中にある「深田の鳥居」です。これも石でできていて、柱の4分の1ほどが田んぼに埋まっています。臼杵石仏と関係が深い日吉神社の鳥居と言われているようですが、これも、はっきりしたことは分からず、謎に包まれています。石仏とその周辺には、まだまだ多くの謎が残っており、それだけに、人の心を惹きつけるロマンに満ちているのです。
おおらかながら謎に包まれた鳥居

おおらかながら謎に包まれた鳥居


ハス料理をいただく

臼杵石仏の入場券売り場の近くにある「うさみ茶屋」という店で、 さらに、わたしの心を惹きつけるものを発見! それは、ハスの花が咲く時期限定の特別メニュー「蓮料理」です。
ハスの葉や花をうまく使った盛り付けも美しい

ハスの葉や花をうまく使った盛り付けも美しい

ハスの葉に包まれたハスごはん。上に乗っているのはハスの実

ハスの葉に包まれたハスごはん。上に乗っているのはハスの実

これがもう、こんな田んぼの中の店とは思えない洗練された味で、見かけもすごくきれい。蓮根を使った料理だけでなく、厳選されたおいしい野菜を使った小さな料理がたくさん出てきて、どれもこれも、繊細で美味です。このお料理は毎年好評で、もう9年も続いているとか。毎年内容が変わるようですが、今年のメインは、ハスの葉に包まれたハスご飯と蓮根のハンバーグでした。

■うさみ茶屋
住所:大分県臼杵市深田833-5
TEL:0972-65-3333
料金:蓮コース 3150円
詳細情報

■臼杵石仏
住所:大分県臼杵市大字深田804-1
TEL:0972-65-3300(石仏事務所)
料金:大人530円
詳細情報


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