流産の基礎知識/流産と時期

妊娠初期の流産の症状・原因・手術方法

妊娠初期に起こる流産の原因は、そのほとんどが受精卵の異常であり、染色体や遺伝子に異常があってうまく細胞分裂ができなかったために偶発的に起こるもの。流産の症状と原因、流産後の手術方法を解説します。

竹内 正人

執筆者:竹内 正人

妊娠・出産ガイド

妊娠初期の流産の症状・原因・手術方法

流産は全妊娠の10~15%と高い確率で起きている

流産は全妊娠の10~15%と高い確率で起きている

流産とは、妊娠22週未満に、なんらかの原因で赤ちゃんが母体の外に出てしまうことをいいます。そのうち、妊娠12週未満の流産を早期流産、妊娠12週以降22週未満を後期流産と分類します。

早期と後期では流産の原因が違ってきます。妊娠初期に起こる流産の原因はそのほとんどが受精卵の異常で、多くは染色体や遺伝子に異常があってうまく細胞分裂ができなかったために、偶発的に起こるもの。初期流産の原因・症状・手術方法を解説します。

■妊娠初期の流産・目次

初期流産の原因・症状

早期流産でもその多くは、胎児心拍が確認できる妊娠初期におこります。妊娠初期の流産は、そのほとんどが受精卵の異常、すなわち、赤ちゃん側の原因です。妊娠12週以前の早期流産の多くは、染色体や遺伝子に異常があってうまく細胞分裂ができなかったためで、偶発的に起こるものです。

妊娠12週以降の後期流産では、子宮頸管無力症といって子宮の出口がゆるんでしまったり、感染を起こしたり、あるいは子宮の形に異常があったりというような母体側の原因によるものが増えてきます。

妊娠初期の流産は受精時点で運命が決まっている

初期流産は受精時点で運命が決まっていて、避けることが難しい

初期流産は受精時点で運命が決まっていて、避けることが難しい

流産をすると、自分の不注意だったと自分を責めてしまう人も多いと思いますが、妊娠初期の流産のほとんどは、受精の時点で、すでに運命が決まっています。いくら母親が注意していても、流産を避けることはできません。つまり、赤ちゃんは途中でだめになったのではなく、与えられた時間を全うし、生ききったということになります。

流産は全妊娠の10~15%と高い確率で起きています。自然淘汰と捉えるむきもありますが、短い命であっても、その子があなたたちのところへ来てくれたことは、何らかの意味があると考えるほうが、受けとめやすいかもしれません。

なお、妊娠12週以降の後期流産では、子宮頸管無力症といって子宮の出口がゆるんで開いてしまったり、感染を起こしたり、あるいは子宮の形に異常があったりというような母体の原因となる割合が増えてきます。

流産の種類

■稽留(けいりゅう)流産
赤ちゃんは子宮内で死んでしまっているものの、そのまま子宮内に留まっている状態をいいます。自覚症状はありませんが、超音波検査で、胎児が見えてこなかったり、心拍が確認できないことから、診断されます。

■進行流産
子宮口が開き、赤ちゃんや付属物(胎盤のもとになる組織など)が流れ出ている状態で、もはや止めることはできない進行した流産をいいます。

■不全流産
進行流産が進み、赤ちゃんや付属物がほとんど外に出ていますが、一部が子宮内に残っていて、出血はまだ続いている状態です。

■完全流産
赤ちゃんと付属物が完全に外に出てしまった状態です。出血はしばらくすると自然に止まってきます。

※なお「化学的妊娠(流産)」は、着床をしているので定義上は妊娠のはずですが、現在、医学的には妊娠(流産)とカウントしないのが一般的です。化学的流産のほとんどは染色体異常なので、2回以上続けて流産を繰り返す習慣性流産とは関連ないということもあるのでしょう。

流産後の手術

流産後は赤ちゃんと付属物を取り出す手術が一般的

流産後は赤ちゃんと付属物を取り出す手術が一般的

流産後は赤ちゃんと付属物を取り出す手術が一般的です。稽留流産の診断がつけば、赤ちゃんと付属物を取り出す手術の日が決められ、後日に手術となるのが一般的です。下腹の圧痛、熱発など、子宮内感染の兆候がなければ、急いで手術する必要はありません。もし、そのままにしておけば、いつかは陣痛が来て、赤ちゃんは産まれてきます。これが自然流産です。

超音波がない時代は自然流産が一般的でした。今は、出血などの症状がなくても、超音波でかなり早い時期に流産の診断がつくので、逆に、すぐには受け入れられないことも増えてきています。予期せぬ流産の診断で、動揺し、どうしていいのかがわからない時、あなたがもう少し待ちたい場合は、医師に伝えてください。診断がかわることはまずないでしょうが、待っていて医学的に特に問題がないようであれば、時間をおいて後日に、再度、確認することになるでしょう。

もし、自然流産になるまで待ちたいという場合、それを受け入れてくれる医師は多くはないかもしれませんが、相談してみましょう。ただし、進行流産、不全流産の場合は、そのまま入院となり手術となります。完全流産では、その状況にもよりますが、そのまま自然経過をみる場合と、内容が残っていないかを確認するため、掻爬(手術)をする場合があります。

流産後手術の前処置

手術は日帰りで行う場合もありますし、1泊入院となることもあります。子宮口が堅く閉じていることがほとんどなので、経産婦でなければ、前処置として、ラミナリア桿といってコンブの茎根を原材料に作られた細くて7~8cmの棒状の器具を何本か子宮頸管内に挿入することが多いでしょう。

ラミナリア桿は周囲の水分を吸収して膨張するので、子宮頸管を徐々に開いてゆきます。ラミナリア桿に類似した製品も開発されていて、そちらが使われることもあるでしょう。ラミナリア桿挿入時と挿入後数時間は痛みと違和感があります。痛みが強い場合は、痛み止めを服用することも可能です。


流産後手術の麻酔方法

手術は静脈麻酔で、眠っている間に行われます。子宮内容除去術(掻爬手術)といい、子宮の内容物を人工的に排出させる手術です。所要時間は5~10分ほどです。

術後1~2日問は無理をしないことが望まれます。1週間ぐらいは入浴を控え、シャワーが無難でしょう。手術後1週間の診察で特に問題がなければ、ふつうの生活に戻してかまいません。


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