文章:神戸 孝(All About「マネープラン入門」旧ガイド)
皆さんの中にも、外貨建て投資と聞くと、すぐに「為替リスク」があるから…と考える方が多いのではないでしょうか。しかし、私は日本人が自分の資産運用を考える上で、外貨建て資産を保有しないことの方がむしろリスクが高くなるという時代が訪れようとしていると思います。
確かにこれまでは、日本の個人が外貨建ての運用を考える必要性はあまりありませんでした。それは、為替が変動相場制に移行して以来、95年春頃まで20年以上にわたって、各国の通貨に対して円高が基本的な流れだったため、円による運用が極めて効率的であったからです。
例えば米ドルに対しては、1ドル=360円から1ドル=80円となる流れの中で、円建ての資産は、米ドル建てにすると4.5倍の価値を持つようになりました。私たちが海外旅行を安く感じるのも、日本の個人金融資産が巨額と言われるのも、現在の1ドル=115円という為替レートによるところが大きいのです。もしも1ドル=230円という為替レートになれば、日本人の個人金融資産は、ドル建てにすれば今の半分しかなくなってしまうことになります。
円建て資産の価値を増加させて来た円高一辺倒の為替の流れに、既に変化が生じているということは、皆さんもお気づきのことと思います。もともと円高が続いて来た最大の背景は日本経済の継続的な成長にあったわけですから、バブル崩壊後低成長時代に突入し、マイナス成長まで経験するような状況の国の通貨が更に強くなっていくはずもありません。成長を続ける「青年」としての円は「大人」となり、今後はやはり「大人」の通貨である米ドルやユーロとは、大人どうしの関係(ボックス相場)となる可能性が高いだろうと思います。
それに加えて、日本は原油の90%以上を輸入に頼る、食料自給率が40%しかない国です。米国のように鎖国してもやっていける国ではありません。その結果、国内がどんなに不況であっても、原油価格や食料価格の高騰などの海外要因によって、インフレがいつでも起こりうるということに気づかねばなりません。
これらを考え合わせると、今後の資産運用では、低利回りの円資産だけを保有し続ける方がリスクは高く、日本の個人の立場から見ても、外貨建て資産をポートフォリオの一部に組み入れるべき時期は既に到来していると言えるでしょう。
このような状況の中で、今のうちに外貨建ての金融商品に慣れ親しんでおくことは、非常に大きな意味を持ちます。人間は「未知のもの」に対しては、恐怖感を抱きがちです。将来、今以上に外貨投資が必要になる時期が来たとしても(実際、その可能性が高いと思いますが)、それまでに一度も外貨投資を経験したことがない人は、おそらく第一歩を踏み出すことに大きなストレスを感じてしまうでしょう。
早いうちに、少額から始められる外貨MMFや外貨預金を利用し、為替の値動きを実体験しておくことをお薦めします。ただし、あまりにも頻繁に外貨と円を売り買いしていると為替手数料の負担が大きくなり、運用利回りがどんどん低下してしまいます。外貨投資のコツについても、いずれこのコラム欄でご紹介したいと思いますが、「過度の売買は御法度」ということだけは覚えておいて下さい。