年金/遺族年金の仕組み

夫に冷たい、遺族年金

男女がともに働く現代に、少し乗り遅れている遺族年金。妻のみを保護の対象としているのは、男尊女卑の古い発想? いろんな夫婦の形がある今、遺族年金はどうあるべきなのでしょう?

和田 雅彦

執筆者:和田 雅彦

年金ガイド

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男女が平等に働く時代に

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現在の遺族年金制度は夫に厳しい!?
日本では長らく「男は外で働き、女は家庭を守る」という慣習があり、今もこの慣習がある程度残っています。しかし男女雇用機会均等法のスタートや男女共同参画社会への取り組みなど、女性が働き続けることを社会が後押しする制度の整備が徐々にではありますが着実に進んできています。

実際、総務省の「労働力調査」により労働力人口の動きをみると労働力人口に占める女性の割合は昭和63年以降、4割を占めるようになってきています。また労働力率(労働力人口/15歳以上人口)の動きをみると、女性の半数に近い49.3%は何らかの形で働いているという結果が出ています。女性もどんどん働き続ける時代になってきていることがわかります。

「女が働き、男が家庭を守る」スタイルもアリ?

これからの時代、「男は外で働き、女は家庭を守る」という昔ながらのライフスタイルに縛られるのではなく、「男女共外で働き、家庭も守る」スタイルや、「女性が働き、男性が家庭を守る」(いわゆる専業主夫)スタイルもアリなのかもしれせん。

総務省「労働力調査特別調査」(2001年)によると既婚世帯の夫の働き方を見ると、無職の割合はわずか2.5%です。無職と言っても失業中の人もいるでしょうから、実際に専業主夫をしている世帯はまだまだ少数なのでしょう。しかし、今後これについてはもっと増えていくことが考えられると想定されます。

新しい形の男女の役割分担で年金で困るケースも……

このライフスタイルの多様化に年金制度がしっかりついてきているのかと言うと、残念ながら、少し遅れているというのが実情です。

それを最も象徴的に表しているのが遺族年金です。遺族年金は一家の大黒柱(稼ぎ手)に万一のことがあったときに遺族の生活を保障するものですが、国民年金から支給される「遺族基礎年金」の遺族の範囲は「子のある妻」と「子」に限定されています。「夫」は受け取ることができません。

また厚生年金から支給される「遺族厚生年金」についても「妻」は遺族年金を受け取る際に条件はないのですが、「夫」の場合は55歳以上か、重度の障害がある場合に限定されます。従って、「女性が働き、男性が家庭を守る」スタイルの夫婦の家庭で、稼ぎ手である妻に万が一のことがあったようなケースでは、夫には何も支給されないケースも有り得ます。

例えば共働きの夫婦(共に40代会社員、共に年収500万円)の場合、夫が死亡したときには妻に遺族厚生年金が支給されますが、妻が死亡したときに夫に遺族厚生年金は支給されません。同じ年齢、同じ収入でも性別で「区別」されていることになります。

次のページで「改革案」を考えます

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