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資本金でこんなに変わる税金

資本金の金額はどのように決めていますか。資本金によって税金は大きく変わってきます。資本金の「3つの壁」を理解し、資本金で節税する方法があります。

今村 仁

執筆者:今村 仁

中小企業・個人事業主の節税対策ガイド

資本金がたった50万円違うだけで税金が高くなる

資本金でこんなに変わる税金

資本金でこんなに税金が高くなる

先日お伺いした新規のお客様でこんなことがありました。決算書を見せて頂くと、資本金が「1,050万円」なのです。社長にお聞きしても「1,050万円」になった詳しい経緯は結局わからなかったのですが、それだけで毎年、税金が約14万円も高くなっていたのです。

そう、法人住民税の均等割です。資本金「1,050万円」が「1,000万円」になっただけで均等割が約14万円(注)も少なくなるのです。

(注)法人住民税の均等割は地方ごとに異なります。

資本金はいくらにすればよいのか?

このように資本金の金額が変わると、均等割だけではなく、他にも影響する項目がたくさん出てきます。では資本金はいったいいくらにするのがよいのでしょうか。税金面から考えた場合、資本金には大きく3つの「壁」があります。

□資本金1,000万円の壁
□資本金3,000万円の壁
□資本金1億円の壁

第一段階~資本金1,000万円

まず最初は「資本金1,000万円の壁」です。これは以下の2つに影響します。

(1)新設法人の消費税2事業年度免税
(2)法人住民税の均等割

新規に法人を立ち上げる場合には、資本金1,000万円未満にすると、基本的には設立以後2事業年度は消費税が免税になります。また冒頭で紹介したとおり、1,000万円を超えると法人住民税の均等割が高くなります。

第二段階~資本金3,000万円

次は「資本金3,000万円の壁」です。資本金3.000万円以下の法人は「特定中小企業者等」に該当します。特定中小企業者等の主な特例は、「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別控除」です。

これは中小企業者等が機械等を取得した場合、その取得価額の7%(ただし法人税額の20%まで)を法人税額から直接控除できる特例です。資本金が3,000万円を超えると、特別償却しか適用できません(ただし、所有権移転外リース取引により取得したリース資産については特別控除のみ)。

ただし、生産性向上に資する一定の設備については、資本金3,000万円超の法人であっても、税額控除が適用できます。

第三段階~資本金1億円

最後が「資本金1億円の壁」です。この壁が最も大きな分岐点となります。資本金1億円以下の法人は「中小企業者」として、資本金1億円超の法人に比べ、税務上様々な特例が受けられるためです。主なものを以下に列挙しておきます。

(1)法人税の計算上、所得金額800万円まで軽減税率(15%)が適用できる
(2)800万円以下の交際費が全額損金算入できる
(資本金1億円超では、原則的に交際費全額が損金不算入になる)
(3)30万円未満の少額減価償却資産が全額損金算入できる
(ただし、年間300万円を限度とする)
(4)特定同族会社の留保金課税の対象除外となる
(5)欠損金の全額繰越控除が適用できる(9年)
(6)欠損金の繰戻還付が適用できる
(7)各種特別償却、特別控除が適用できる
(8)法人事業税の外形標準課税の対象外になる
(9)法人住民税の均等割が少なくなる
(10)原則国税局管轄から外れる(資本金1億円未満の場合)

上記の特例を利用すれば、最大300万円以上もの節税をすることも不可能ではありません。また税務以外でも、信用保証協会の融資や中小企業退職金共済などを利用できる場合があります。

減資のススメ

この「3つの壁」を頭に入れながら、ご自分の会社の資本金について考えてみてください。資本金が上記の分岐点すれすれというような場合には、特に支障がなければ、一段階下の資本金にすることを検討してみても良いと思います。思わぬ節税が出来るかもしれません。

(平成27年度改正により、一定の減資について法人住民税の均等割税金を減らすこともできるようになりました)。

ただし、減資をするには株主総会の特別決議や債権者への公告等が必要ですので、株主はもちろん、取引先、金融機関等にも影響を及ぼします。決して節税のためだけにするものではないということを最後に付け加えておきます。
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