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アメリカ大統領選挙、気になる疑問(3ページ目)

アメリカ大統領選挙が白熱しています。ここで、アメリカ大統領選の報道などで出てくる用語や制度などについて、よくわからない方もいらっしゃると思うので、ちょっとまとめてみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【無所属からでも立候補できるのか?】
2ページ目 【党員集会・スーパーチューズデーとは?】
3ページ目 【「本当の大統領選挙」は11月ではない?】

大統領選挙人とは?

最近の大統領選
2000年は、全国得票率で劣るブッシュ候補(当時)が獲得選挙人の数で上回り、当選を果たすという異常な結果になった。
文字通り、大統領選挙に参加する人です。州の人口に応じて合計538人が州ごとに選出されます。選出方法は州が決定します。選挙人の数は州から選出される上院・下院と同じ数となっています。

下院の議員数は各州の人口に比例されるように定められるので、州の人口によって大統領選挙人の数が決まってきます。最多のカルフォルニア州では55人、最小のアラスカ州では3人です。

アメリカ大統領選挙制度は18世紀の末、日本ではまだ江戸時代のころに決まったものです。そのような時代のことですから、この頃のアメリカのエリートたちは、一般大衆が直接国家元首を決めるということは正直無茶なことだと考えていたのです。

こうして、庶民が良識のある偉い人を選び、選ばれたすぐれた人が大統領を選ぶと……いうかたちで、アメリカの大統領選挙は始まったのでした。

しかし19世紀に入り民主化が進んでいくなかで、1820年代になると各州では、一般有権者が二大政党の候補の大統領選挙人を、どちらか一括して選び投票するという方式が続々と採用されていきました。これだと有権者が大統領候補を選ぶのと、ほとんど違いがありません。

こうして1868年までには、州で最も得票した候補に、州の大統領選挙人全員を配分するという「勝者独占方式」が定着するようになったのです。

とはいえ、集計は州別なので、候補に配分された選挙人の数と、候補の全国得票数の順位が逆転することもあります。有名な例が2000年選挙です。全国の一般有権者の投票数ではゴアがブッシュより50万票リードしていたものの、フロリダ州で集計が再三にわたってやり直された結果、500票あまりの差でブッシュがフロリダを制し、大統領選挙人の配分数で逆転、大統領となったのです。

このようなこともあって、現在の「勝者独占方式」を見直す動きもないわけではありません。現にネブラスカ州とメーン州では、下院選挙区での勝者に1名づつ、全州での勝者に2名、選挙人を配分する方式をとっています。

「本当の」大統領選挙はいつ?

大統領選スケジュール
大統領選のスケジュール。意味を持つのはもちろん一般投票であり、大統領選挙人による投票などは形式的なものにすぎない。
先にお話ししたように、一般有権者は形式的には大統領選挙人しか選んでいません。これは「一般選挙」といわれ、大統領選挙年の11月の第1月曜日の次の火曜日(2008年選挙は11月4日)に実施されます。

そして、選ばれた大統領選挙人(州の党幹部や功労者などが選ばれたりすることが多く、大統領候補の親戚・友人などが選ばれることも)たちは、12月の第2水曜日の後の最初の月曜日(2008年選挙は12月15日)に州ごとに集まり、投票用紙に大統領と副大統領の氏名を書き、州知事の確認を経て、連邦議会に送られます。

ちなみにこの投票用紙(の写し)は州政府、国立公文書館長、その州を管轄にしている連邦地方裁判所にも送られます。

そして連邦議会で翌年1月6日、上下両院合同会議が行われ、集計、大統領が正式に選出されます。

したがって本当に大統領が「当選」するのは、一般選挙の翌年なのですね。

なぜこんなに時間がかかるか……これもやはり19世紀の名残です。当時の交通事情などから考えると大陸は遥かに広く、投票用紙を送るにも1ヶ月くらいかかっていたからなのですね。

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▼こちらもご参照下さい。
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