掲載日: 2005年 11月 29日
松井証券 松井社長インタビュー
左が松井氏、右がガイド |
松井証券は、ネットストック、さらにはボックスレートの導入といった証券業界における革新的なアイディアを次々と実現させ、ものすごい成果をあげています。さらにリテールに特化したマーケティングで成功しています。
プロフィール
松井道夫[マツイ ミチオ]1953年生まれ。一橋大学経済学部卒業。日本郵船に11年勤務後、87年に義父の経営する松井証券に入社。取締役、常務を経て95年から社長を務める。98年よりインターット取引システム「ネットストラック」をスタートさせる。
トップが哲学を持ちそれをわかりやすく伝えていくことが重要
ガイド:松井証券は、これまでにネットストック、ボックスレート、無期限信用取引、引受販売手数料の無料化と革新的なアイディアを次々とリリースしてきました。大胆な戦術の全ては「ユーザーの求める革新的なサービスを提供し続ける」というところに帰結しているように感じます。松井社長のマーケティングについてのお考えをお聞かせいただけますか?
松井:
うちのマーケティングを考えたときに、一番のポイントは私のパーソナリティーを全面に打ち出した、ということです。ただ勘違いしてほしくないのですが、これで私は完全に満足しているわけではありません。これ以上のマーケティングなり手法を松井証券がまだ見いだせていない、ということです。
この手法で代表的なのは、先日亡くなられた、中内さん。彼は日本の流通革命を起こした当事者ですが、ダイエーの顔として、彼のパーソナリティーを全面に押し出して一時代を築きました。私も証券業界という非常に保守的で規制にがんじがらめの世界に、今から十数年前に全く違う業界からやってきて、それなりの革命を起こしたという自負心を持っています。
ガイド:
確かに松井証券が証券業界に与えたインパクトは革命的でした。
松井:
しかしそれは、そうやろうと思ってやったのではなく、結果的にそうなったということなのです。
ガイド:
結果的にということは、松井証券のモデルというのはあらかじめ設計されていたものでは無いのですか?
松井:
世の中の経営者で、たとえばユニクロの柳井社長もそうだと思いますが、自分はこうやりたいと思ってまずビジネスモデルを作り、その通りに実行し成功したという人は少ないと思います。今日のことしか考えられない。明日のことなど、とてもじゃないけど考えていられない。のたうちまわってハッと気が付いたらこうなっていた、と、そういう方が多いですよ。私も同じです。自分でも驚くぐらいのエネルギーを使って、ある一つのビジネスを作った。それを成功と呼ぶかは知りませんが、それにこの先安住するつもりはさらさらありません。
だから私は常に危機感をもって、常に革新的なモデルを模索しています。それが見出せなかったら、松井証券は昔は元気よくて色々な業界の革新をやったけど、ピークはあの時だったな、ということで過去のものとなってしまいます。そして世の中から忘れ去られる存在になったら、松井証券はお客様からそっぽを向かれてしまいます。
常に危機感を持て
ガイド:それは松井社長の新著『好き嫌いで人事』にも書かれている「常に危機感を持て」という部分ですね。
松井:
そうです。ユニクロの柳井さんが、あそこまで高収益企業でありながら、売上が落ちたといって、世の批判を浴び、さらに自ら選出した社長を解任して、今は第三の創業と言って背水の陣をしいてやっている、あの心象風景と似たようなところが私にもあるのかもしれません。これは他のビジネスである程度のことをやった人間は皆もっています。そういったものを世の人たちに前向きに共感してもらえるかというのがマーケティングのポイントになります。
ガイド:
社長のパーソナリティーに対しての共感が重要、ということですね。危機感ということについて、最近は、ネット証券各社が競って手数料の安さをアピールしていますね。
松井:
今、手数料競争と言われていますが、これによってユーザーがより安いところに流れていく、ということだったら、結局は業界の収益の水準が下がるだけです。でも、それはそれで価値がなくなったものは、どんどん下がっていくのだと思います。例を挙げると、たとえば腕時計は、最近では洋酒のおまけで付いてくる。おまけだけど、時計としての役割は果たせている。誤差だってせいぜい1ヶ月に2、3秒くらいでしょ。下手するとスイスの100万円とか300万円する機械式時計より精度は高いかもしれない。出始めたときはありがたがったけど、今や洋酒の景品にまで落ちてしまいました。
ガイド:
先ほどのユニクロさんの例でもフリースは出始めは2万円でしたけど、アッという間に1,980円になりましたね。今2万円で買う人は誰もいません。
松井:
そういうことです。物とかサービスの供給は、需要があればどんどん競争が生まれて価格が低下していく。何も改善しなかったら、最後は無価値になっていく。だから価格で勝負できるのは最初だけ。最後には価値は無くなっていくのですから。常に新しいものを構築して打ち出していかないと、消費者は支持してくれません。
ガイド:
松井証券が革新的な手法を次から次へと打ち出しているのにはそういう理由があったのですね。
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左が松井氏、右がガイド
