コーチング・マネジメント

ガイド:平野 圭子

現場ですぐに実践できるコーチングを、事例を交えながらわかりやすく解説。

 

掲載日: 2009年 09月 26日

部下の営業力をアップさせる関わり

相手の能力を引き出す育成方法

対立する人
営業スキル開発にコーチングを活用する
「うまくいっている営業マンとそうでない営業マンの差は何か」

この質問にあなたはどのように答えますか? 多くのマネジャーがスキルと努力を挙げます。そこでマネジャーたちは、売れない営業マンを売れる営業マンに変身させるべく、そのための研修や叱咤激励に励みます。

部下の営業力をアップさせる手法はさまざまなものがあり、あなたも日々試行錯誤をしていることでしょう。しかし、どんなに力を尽くしても効果が出ない……ということはありませんか?

マネジャーの多くは育成の際、「足りないもの(スキルや知識)を身につけさせること」に注目しがちです。それももちろん1つの有効な方法です。

一方、コーチングでは「相手の能力を引き出すこと」「相手の持てる能力を充分に発揮させること」に目を向けます。今回はそんなコーチング型営業力アップ術を紹介します。

各メンバーの営業スタイルを見極める

特に実績を重んじる営業チームにおいて、マネジャーはプレーヤーとしての実績をもとに任命されることが多いものです。マネジャーは元スタープレーヤー、実はここに落とし穴があります。

成功者は自分の方法にこだわる傾向があります。しかし、あなたの営業スタイルを真似れば誰しもが売れるようになるとは限りません。人によって得意不得意は異なります。あなたが華麗なトークで売る「プレゼン型営業マン」であったとしても、なかには相手の話をじっくり聞くことで売る「沈黙型営業マン」もいるのです。自分に合わない方法を強要されるのは、想像以上に苦痛を伴います。それでは成果につながるはずはありません。

その営業マンがどんなタイプなのか、どんな営業スタイルを得意とするのかを見極め引き出してください。同時に自分の得意なスタイル以外の方法にもつねにアンテナを立てていくことが必要です。

「売ること」の意味づけを明確にする

対立する人
意味づけを効果的に行うことは、売る姿勢を作ること
おそらくすべての営業マンが、売ることの必要性を感じているはずです。しかし、だからといって頭での理解がすべて行動につながるとは限りません。また、営業マンとしてのスキルや知識が十分なのに成果が出ないというケースもあります。そんなとき成果につながる行動を起こさせるには、彼らのエンジンに働きかける必要があります。

売れない営業マンのなかには、売ることやお金を儲けることに実は罪悪感を持っていたり、「売る」ということに対して「お客様に無理して買っていただいている」「高いのに買ってもらっている」というネガティブな捉え方をしている場合があります。これでは意欲的に「売る」ことに没頭できるはずがありません。

また、なかにはわかりやすく説明する、顧客の要望をすべて通すなど、顧客を喜ばせた時点で満足しまうといった営業マンもいます。

このような場合、「売る」ということについてどんな意味づけを持っているのか、「売る」ことに対して高い優先順位づけをできているかなどについて上司が一緒にしっかりと話すと、彼らは「売る」ことに対して積極的な意味づけをしたり、その優先順位を上げることができます。

トップ営業マンにこそ関わりが必要

営業チームを率いるとき、はやり気になるのは売れない営業マンでしょう。しかし、売れる営業マンにも成功し続けることを期待されるプレッシャーや、トップセールスとしての行き詰まりなど悩みがあります。彼らを足踏み状態にさせず上昇し続けさせ、その結果チーム全体の売り上げや質を上げるには上司であるあなたからの次のようなアプローチが必要です。

■コントロール可能な成功パターンをつくる
成果を出している営業マンのなかには、売れるためのパターンや行動を無意識にとっているため、なぜ自分が売れているのかが実は解明できず、いつか売れなくなるのではないかという漠然とした不安を持っていることがあります。彼らにはなんとなく、あるいは偶然しているという状態から、意識的に成功しているというコントロールできる状態へのシフトが必要です。

目標達成や成約をしたとき、あなたがタイミングよくそのプロセスについて問いかけたり、気づいたポイントをフィードバックすることで彼らは自分の成功パターンを明確にし、それを意識的に再現していくことで安心感と自信を持つことができます。同時に明らかになった成功パターンは、チーム共有の知恵にしていくことができます。

■ビジョンを描かせ続ける
目標達成をし続けている営業マンのなかには「次の目標が見えない」「チャレンジしている感じがなくつまらない」「自分が成長していると思えない」といった不安や不満を持っている可能性があります。極端な場合、刺激や変化を求め転職をしてしまうということも考えられます。

放っておいても実績を上げてくれる優秀な社員こそ、手間をかけるべきです。チャレンジングな次の目標を設定したり、中長期のキャリアパスを一緒に検討したり、時には次期リーダー候補としてメンバー教育や後進育成といった新しい役割を期待するなど、上司が彼らのビジョンに興味を示し、関わることで彼らはビジョンを描き続けることができるのです。

売れない営業マンへの関わり方

対立する人
相手のタイプを見極め効果的な問いかけをすることで、売れる人になる
あなたの頭を悩ませるのはやはり「売れない営業マン」の存在、そして彼らへの関わりではないでしょうか? 成果を出せない彼らを前に「できないことをできるようにしてやりたい」「不足部分を補ってやりたい」という気持ちが大きくなると思います。しかし、そのこと自体が彼らに「自分はだめな人材だ」と自信を失わせてしまう場合があります。ここでは少し違った視点での関わりを考えてみましょう。

■負の行動パターンを繰り返さない
がんばっているし熱意も感じられるのに、どうにも売り上げにつながらない。そんなタイプの売れない営業マンは、たとえば「ずっと同じセールストークをしている」「提案書作成に時間をかけすぎ、営業件数自体が少ない」「効果がないのに同じ方法で電話がけばかりをしている」など、成果が出ないのに同じことを繰り返すという負の行動パターンに陥っている可能性があります。

効果のないことをいくら積み重ねても意味がありません。それどころか「がんばっても成果が出ないなんて自分は無能だ」と、さらに自信を喪失させます。しかし、実は方法が悪いだけなのです。

成果が出ないのに無駄な行動を繰り返す理由の1つには、他の選択肢がないことが挙げられます。このとき、必ずしもあなたが選択肢を与える必要はありません。人は習慣化するのが好きな生き物です。放っておくとパターン化した思考や行動に安住します。そんなとき、質問を受けるなど外部からの働きかけがあると、眠っている選択肢が引き出されることがあります。

■新しい構造をを引き出す
「全く違う方法を試すとすれば何から始める?」
「何か新しく試したいことはない?」
「他の営業マンの技で試してみたいことはある?」

このような働きかけで新しい行動プランを引き出せば、彼らは自然と負のスパイラルから抜けることができます。

コーチは目の前の人に対して「この人が持っている能力を120%発揮させる」ことに注力します。あなたの部下それぞれについて、彼らが最高のパフォーマンスを発揮している様子を思い浮かべてから、彼らに関わることを試してみて下さい。きっとあなた自身のやりがいや楽しさも大きくなるはずです。

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